第7話貴方たちが出ていって
「俺はお前に離婚を言い渡す! そして、本当に愛するキャサリンと結婚すると、ここに宣言する!」
「ローレイ様、嬉しい!」
ローレイの発言に感動し、満面の笑みを浮かべるキャサリン。
「ご結婚おめでとうございますローレイ様! キャサリン様!」
「よく言いました! お幸せに!」
「あんな根暗女とは早く離婚するべき! 素晴らしい決断ですローレイ様! お二人に幸あれ!」
そしてその発言を聞いていた他の使用人達からの、溢れる拍手と喜びの言葉。
何だこの異質な空間。よくもまぁ不貞を働いた夫とその浮気女を祝福する声が上がるもんだ。使用人総とっかえでローレイ達の手の者にされたから、当然と言えば当然だけど。
会社だけでなく家までこいつ等の好きにさせてしまったことは、後悔するばかりだわ。
白けているのはこの空間で私とジェームズだけ。
「ふん、言っておくが、今更泣いて後悔しても遅いぞ!」
私が何も言わずに突っ立っているのを、悲しんいるとでも勘違いしました? 違いますよ、呆れて言葉が出なかっただけです。
こんな馬鹿な男と結婚生活を続けるくらいなら、
「お前は俺に惨めに捨てられ、これから路頭に迷う羽目になるんだ! はっはっ! 残念だったな!」
「ありがとうございます! まさかそちらから離婚を提案してくれるとは思いませんでした! 流石、考えなしの旦那様! 最高です!」
「……は?」
「……へ?」
キャサリンに負けないような満面の笑顔でお返事すれば、お二人の予想に反していたのか、呆気にとられたような間抜けな声が二人から出た。
泣いて私が縋るとでも思っていました? ご期待に沿えず残念ね。
「離婚了承しました、これでやっと解放されると思ったら、お互い幸せですね」
「き、気でも狂ったのか!? 分かっているのか!? この俺と離婚だぞ!?」
「分かっていますよ。ああ、今まで少しもお世話になった覚えは無いけど、一応、ありがとうございましたと形だけ伝えておきますね」
「……」
以前までの私と百八十度違う態度に、大きく口を開けてポカンとしているローレイ。その間抜け面、笑えるわ。
「これで本当に愛する人と結婚出来るわねローレイ! 何でしたっけ? 真実の愛(笑)でした? どうぞどうぞ、二人でその真実の愛とやらを貫いて下さい! 私は陰ながら応援? しないけど!」
「っ、もういい! いいか!? 助けを求めて来ても絶対に助けてやらないからな! 二度と顔を見せるな! さっさとここから出て行け!」
「はぁ? 何言ってるんですか? 出ていくのはそちらの方です、お忘れですか? ここは、私の実家ですよ」
「――は?」
「だから、ここは私の実家です、名義も私。何で家の持ち主が出て行かなきゃならないんです?」
この家の維持費も、父が私に残してくれた財産で賄っていたようですし、名実ともに完全に私の家なんです。
「そう言えば、父が私に残した財産も勝手に使っていたみたいですね。後で返却を要求するから、きちんと返してね」
「ま、待て待て! おかしいだろ! 何でそうなる!」
「何がおかしいのでしょう?」
「結婚したら、嫁の物は夫である俺の物になるのが当然だろ! だから、家も財産も全て、俺の物だ!」
「……貴方って本当に馬鹿なのね」
「何だと!?」
「んなワケないでしょ、結婚したら全部夫の物になるって、どんな暴君よ。嫁の物は嫁の物よ」
「う、嘘だ! そんなはずは無い!」
嘘だって叫びたいのはこっちよ。何でこんなに馬鹿なの? ちゃんと教育受けた? 確か貴方も一応貴族令息でしょう?
「父様や母様が、フィオナと結婚すれば、全て俺の物になるって言ったんだ! 怒鳴って離婚を盾にすれば、一人で生きていけないフィオナは、何でも言うことを聞くはずだって!」
……それって、私みたいな気弱な女と結婚すれば、怒鳴り散らして無理矢理いうこと聞かせられるから、全部自分の物同然に使える。みたいな意味では? いや、親も最低だな。
「阿呆か」
「なんだと!?」
全部自分の物になったと勘違いして、あんな偉そうな態度を取っていたわけね。
――離婚して困るのはローレイの方なのに。
「そういうわけですので、さっさと出て行ってくれます?」
今度は私が、ローレイとキャサリンに向かって、出て行けと告げる。
自分達がこの家を出ていかなければならないなんて思ってもみなかった二人は、明らかに顔色が真っ青に染まった。
「いや、まだだ! 俺が出て行けば、カルディアリアム伯爵家の当主がいなくなるんだぞ! いいのか!? 当主がいなくなって困るなら、今すぐこの家を俺に渡せ!」
往生際が悪いな、うっざい。
目配せすると、ジェームズは直ぐに書類を取り出し、私に手渡した。
うんうん、ちゃんと手配してくれたみたいね。
「この俺が家の主、カルディアリアム伯爵なんだ! 俺がこの家で一番偉い存在なんだ!」
「はい、私が貴方に代わって、カルディアリアム伯爵に任命された、皇室から送られた正式な公文書です」
「――は?」
ローレイはさっきから驚きの連続ですけど、大丈夫? ついていけてる? あんぐりし過ぎて、顎外れてない?
でもこれは紛れも無い事実なので、しっかりと受け止めてね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。