第13話【家族】

アントラ「…久方ぶりだな、アルディア。」


アントラがそういうと、魔女は微笑み…被っていたフードを取った。

話に聞いた通り、髪色は炎を纏っているような髪をしていて、深紅のような瞳をしていた。

彼女は、ゆっくり口を開いた。


アルディア「よくこの場所が分かったな、アントラ。まさか、空を飛んででもしたのかい?(笑)」


アントラ「人間の姿にしてくれたのは、お前だろう?そんな冗談はやめてくれ。それに、私には家族が居る。」


アルディア「知ってるともさ。そこに居る少年には会ったことがあるからねぇ…。(レイズに指をさす)」


レイズ「(指を指され)…ははっ…どうも……。」


アントラ「…やっぱり来てたんだな。」


そうこう話していると、アルディアはアントラに隠れている『アルテミシア』を見つけ…アントラにこう言った。


アルディア「アントラ、お前…何故【赤い小鳥】を連れてきた…?(緊迫)」


アントラ「彼女がアルディアに会いたがっていたから、連れてきた。」



アルディアは、少し喜ぶ表情を浮かべたが…押し殺すように喋らないまま…

レンガ造りの小屋に入ろうとする。それをアントラがアルディアの腕を掴んで止める。


アントラ「おい!アルディア!」


アルディア「……れっ…」


アントラ「…えっ…」


アルディア「帰れって言ってんだ!!(声を震わせながら)」


レイズ「…で、でも…アルテミシアは…あなたに会いたくて……」



アルディア「…帰れ。私には【家族】など要らん。」


そういうとアルディアは、勢いよく扉を閉め…小屋に入ってしまった。


アルテミシア「……っ。」


アントラ「…何故、アルテミシアを拒否するんだ…。」


レイズ「…とりあえず、今日はもう帰りましょ…?日もくれてきました。」


アントラ「…そうだな…。」


アントラとレイズの2人は、その場から去ろうとしましたが

アルテミシアは、その場から動こうとしません。


アルテミシアは、小屋の前に立ち…話しかけるように喋っています。



アルテミシア「…母様は、本当に私の事嫌いなの…?あんなに優しかった母様はどこに行ってしまったの…?母様からもらったネックレス…まだ身につけてるよ?

…ねぇ、母様…返事してよ……。(涙ぐみながら)」



でも…アルテミシアがどんなに話しても、反応はありません。


アントラ「…アルテミシア…..。もう日が暮れる…帰ろう。」


アルテミシア「…うんっ…。」


アントラに手を引かれ、アルテミシアは寂しそうにその場を去るところを

アルディアは、小屋の窓ガラスから覗いているのでした…。


【嘘】

その後アントラ達は、宿に戻り…疲れを癒すように眠りについたが、

アルテミシアだけは眠る事はせず、森の中へ行き……

1人でレンガ造りの小屋に行きました。


アルテミシアは、小屋の前に行き…ドアの前に立ち、静かに喋り始めました。


アルテミシア「…母様、私です。【赤い小鳥】です。今は、名前をもらって【アルテミシア】になりました。母様に会いたくて…1人、森の中歩いてきました。」



アルテミシアは、一生懸命…ドアの前で話しましたが…

ドアは開く様子がありません。


次第にアルテミシアは、疲れてしまったのか…ドアを背にし、眠りについてしまいました。


そこに、動物の足音と人間の足音が聞こえて来ましたが、アルテミシアは眠りについていて気付きません。


アルディア「…おやおや。こんな所まで…1人で来たのかい…。全く困った【小鳥】だよ…。(呆れながらも微笑む)」


アルディアは、二匹の狼を連れ…アルテミシアを抱き抱え、小屋に入って行きました。


しばらくして、アルテミシアが目を覚ますと…既に小屋の中に入っていました。



アルテミシア「…あれ、私…いつの間にか寝てしまったのね…。(眠たそうな声で)」


アルディア「おや、…起きたのかい。【赤い小鳥】…いや【アルテミシア】だっけ…?(微笑む)」


アルテ「…母様っ!(抱きつく)」


アルディア「こんなに甘えるのは、昔と変わらないな…。」


アルテ「母様、私…話したい事が…。」


アルテミシアが話そうとした時、アルディアは話を被さるように話した。

アルディア「…私がお前を捨てて、姿を消した話かい?」


アルテ「…どうして私を捨てて、居なくなってしまったの…?」


アルディア「アルテミシア、よくお聞き。

私は、今までお前に【嘘】を付いていた。これから話す事は全て【本当の話】だ。それを聞いて、どうするかは自分で判断しなさい。」


アルテ「分かった…。」


アルディア「…あれは、【竜族】と【人間】が共同していた時代の話さ…」


アルディアは、自分の過去…アントラと出会った時、そしてアルテミシアの出生について話をした。

アルテミシアは黙って話を聞いていた。


その後、アルテミシアは二匹の狼と戯れたり、アルディアと薬の調合したりと

朝日が昇る頃まで過ごして行った。


ふとアルテミシアは、あることを思い出す。


アルテ「母様…私そろそろ…帰らないと……。」


アルディア「大丈夫…もうすぐ迎えが来る…。」


アルディアが言った通り、小屋のドアが鳴る。

ドアを開けると、そこにはアントラとレイズが迎えに来ていた。


アントラ「……っ。」


アントラは、呆れたような表情を浮かべながら…アルテミシアを見つめる。


アルテ「…あ、アントラ…そのっ…ごめんなさいっ……!」


アルテミシアは頭を深く下げ謝った。アントラはそれを見て、ゆっくり小屋に入り…優しくアルテミシアを抱きしめた。


アントラ「…夜中に、アルテミシアが居なかったから必死に探したんだぞっ……

家族に心配かけさせるな……。」


レイズ「…そうですよっ!?2人して心配したんですからっ…」


アルテ「…ごめんなさいっ…。」アルテミシアは、アントラに抱き締められながら、アルディアの方を見た。

アルディアは、優しく微笑み…ゆっくりと頷いた。


アントラ「(離した後に)…さぁ、屋敷に帰ろう…。」


レイズ「もう帰るんですかっ!?まだ1日ありますよ!?」


アルテ「アントラ…、ちょっとお願いがあるの…。」


アントラ「…なんだ?」


アルテ「母様も…一緒に屋敷に連れて帰りたい……。」


アルテミシアの言葉に、アルディアとアントラは、驚きを隠せない様子を見せている。


レイズ「アントラ様……?」


アルディア「…無茶を言うんじゃないよ、アルテミシア。私は【火の魔女】だよ?簡単に連れて行けるわけ………」


アントラ「分かった。一緒に屋敷に連れて帰ろう。」



アルテミシア・レイズ・アルディア「…えっ!!?」



アルディア「…ちょっと、アントラっ!お前はっ!!(若干怒鳴る)」


アントラ「…アルディアも、大事な家族だ。連れて帰らない訳ないだろう?」


アルテミシア「やったぁ…!!ありがとうアントラっ!(抱きつく)」


アントラ「ちょ、重いだろ!!(嬉しそうに言う)」


レイズ「(まただ、なんか胸が苦しい……。)」


アルディア「(レイズの横に来て)…もしかてあんた…アルテに……。」


レイズ「ちっ、違いますからっ!!(恥ずかしそうに)」



こうしてアントラ達は、アルディアを連れて帰ることになったのだが……。


レイズ「…ところでアントラ様。アルディアをどう連れて帰るのですか?」


アントラ「…普通に連れて行くが…?」


レイズ「だとしてもですよ!?この村人達は、アルディアを信仰しているのも当然なんですよ!?もしバレたら…(慌てる)」


アルディア「そこは、大丈夫さ。私の魔術でどうにかなる。」


アルテミシア「…どういうこと?」



アルディアは、3人を自分の中心に集め…アルテミシアからネックレスを

借り、手をかざす。



アルディア「…真紅の炎よ。我の名の元に集え……」


アルディアが魔術を唱え始めると、真紅に光る火のようなものが

3人の周りを囲む。


アルテ「…これが、母様の魔術……すごく綺麗…。」


アントラ「…彼女は、火の魔術には長けてるからな。」


レイズ「…だから【火の魔女】なのか……。」


アントラ「…さぁ、来るぞ!目を瞑れ。」


アルディア「…我はアルディア…屋敷の元に我らを導け!!」


その言葉と同時に瞬間移動をし、目を開けると…屋敷の前に着いていた。


レイズ「凄いっ!一瞬で屋敷に着いちゃいましたよ!」


アルディア「…しばらく振りに魔術というものを使ったが、なかなか体力は

使うな……。」


そう言いながら、アルテミシアにネックレスを返す。


アントラ「…屋敷に入ろう。もう暗くなるからな。」


アルディア「…相変わらず、褒めない奴だな…アントラは。」



あれこれいいながら、4人は嬉しそうに屋敷に入って行ったとさ…。



これで【人外の主人】の話はおしまい。

えっ…?

アルディアが私に何を話したかだって?それはまた…別の時に話すとしようか……。その時まで、首を長くして待っているといいさ。そしたら………

これ以上は言わないでおこう。


また来ておくれ。待っているよ……。



……To be continued?

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人外の主人 Natal(ナタル) @Natal1204

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