第12話 第3章 後編
そういった話をレイズは、アントラが戻ってくるまで…アルテミシアに
話していた。
アルテ「【魔女・アルディア】…きっとその人が、私の母様の名前なんですね…。(ネックレスを見つめながら)」
レイズ「…アルテは、今まで母様の名前を知らなかったのかい?」
アルテ「…はい。私は生まれた時、この瞳を実の親が嫌い…失明させてしまったらしくて…それで…瀕死な所を母様に……。」
レイズ「…そうだったんだね。でも今は、目は治ってるよね?」
アルテ「はい。でも、この瞳が見えるまで月日はかかったみたいです。そうですね……ちょうどレイズがアントラと出会った頃ぐらいまで。」
レイズ「…じゃあ、アルテも僕と同じって事か……。」
アルテ「…そう、なりますね。」
そうこう話しているうちに、アントラが花畑から戻ってきていた。
手元には、袋に包まれた何かを持っている。
レイズ「…アントラ様、おかえりなさいませ。」
アントラ「ただいま。(袋を見つめ)…こんなところに隠してたとはな…。」
アルテ「アントラ、その袋は何?」
アントラ「これか?…屋敷に戻ってから話すよ。」
こうして3人は、屋敷に戻り…着替えや食事を早めに済ませた。
そして、アントラが自室から例の袋を取り出してきた。
アントラ「…さぁ、取り出すぞ。」
そういうとアントラは、袋から何かを取り出した。
見た目は、大きな爪のような物と、黒い宝石のような石が出てきた。
アルテ「…アントラ、これは何?」
アントラ「…これは、私が【竜】だった頃の【爪】と【ツノの欠片】さ。
また何かに使えると思ってな。」
レイズ「…でもこれ、数百年前に【アルディア】に捨てられたんじゃ……?」
アントラ「…確かに捨てられた。【花畑の底】にな。まさかあんなところに捨てるとは……。御丁寧に効力を切らないように袋に工夫してあった。」
レイズ「…という事は、分かった上でそうしたって事ですか!?」
アルテ「どういう事?(首を傾げる)」
レイズ「…アルテミシア。君が僕らに出会うという事を、君の母様は予測していたって事さ。」
アントラ「じゃなきゃ、アルディアは…彼女はアルテミシアを、月日を掛けても救わなかったはずだからな。つまりは……」
アルテ「…つまりは?」
アントラ「この材料は、今後……君に必要になっていく物…つまりは
【役立つもの】なんだよ。
レイズがあの時出会った女は、君の母様…【魔女・アルディア】で間違いない。きっと彼女は生きてるはずだ。」
レイズ「…でも彼女が生きてる証拠なんてあるんですか?それに生きてたとしても、彼女が僕達のところに来るか、なんて……。それに、アルテは自分の母様の姿を知らないんですよ!?」
アルテ「私、母様に…アルディアに会いたい。たとえ、何かあったとしても…」
アントラ「…決まりだな。では、1週間後に出るからな。」
こうして、3人は【魔女・アルディア】を探す旅に出る事になったのです。
【火の魔女】
1週間後、アントラ、レイズ、アルテミシアの3人は【魔女・アルディア】に
逢うべく、出発の準備を始めた。
レイズ「…食料は、これでよしっと……あとはー…。(ガサゴソと袋に入れていく)」
アントラ「おいおい、レイズ……。3日間の旅だと言ったはずだぞ?この荷物の量はなんだ…!?」
アルテ「(アントラの横に来て)…レイズがね、【あの時の野宿】が死ぬほど嫌だったからって言ってたよ?」
アントラ「(笑いながら)あぁ、あの時の事か。レイズと1週間、北の方に行ってきた話さ。旅の最中にレイズが、大事な金貨を落としてしまってな……。
当然、宿も取れないから…近くの森で野宿したんだがな…寒さと暗さに耐えられなくて…(思い出し笑いをする)」
レイズ「アントラ様っ!その話は止めてくだいって何度も…!!(恥ずかしい感情を露わにする)」
アルテ「…寒さに耐えられなくてどうなったの?」
レイズ「アントラ様!しーっ!!それ以上言わないd…(レイズの言葉を遮る)」
アントラ「その日は酷く寒くて、とても暗かったんだよ。レイズは怖がりだから脅かしてやったら…チビらせてしまってな…(笑いながら話す)」
レイズ「…言わないでって言ったのにぃ……(顔を赤らめる)」
アルテ「そんな事があったんですね(笑)」
レイズ「い、今は!怖くなんかありませんから!!(少し威張る)」
アントラ「そうかぁ…?真夜中でも灯りをつけてるのはどこの誰かな?(笑)」
レイズ「むぅー……(不貞腐れる)」
アントラ「すまないすまない。悪気はないんだ…そんな不貞腐れるなって……。」
アルテ「(楽しそうだなぁ……)」
楽しく会話を嗜みながらも、旅の準備を済ませ…
3人は、屋敷を出て…馬車に乗り込む。
向かうのは南にある、とある国…そこに魔女居るという噂を聞いたのだった…。
アルテ「……っ(緊張した表情をする)」
アントラ「…アルテミシア?大丈夫か……?」
アルテ「…はいっ…緊張してるみたいです…。」
アントラ「大丈夫…。きっと彼女も会いたがってるはずさ…。」
そういうとアントラは、アルテミシアの頭を優しく撫でていた。
レイズ「……っ。(なんだろう…この胸騒ぎは…。)」
しばらくすると、南にある国に着き…3人はゆっくりと馬車から降りた。
南にある国は、ツノ族との服装とは違い暖色系の服や装飾品を身につけている。
アルテ「…凄い…赤い色々がいっぱいだわ……。」
レイズ「なんだか暖かい感じがしますね!」
アントラ「…とりあえず、宿を探しつつ…アルディアの居場所を探そう…。」
辺りを見回す3人の前に、1人の老人が近寄って話しかけて来た。
見た目は、裕福そうな服装をしている。
『お前たち、【火の魔女】を探してるのかい……?』
アントラ「はい、そうです。」
老人『それはそれは……。【火の魔女】様には大変世話になったからのぉ……。』
アントラ「それはどういう…?」
老人『私は数年前まで、奴隷にされてたんじゃ……。若い頃は一生懸命働いたが、歳になれば身体は言うことは効かぬ…。それで商人に殺され掛けた所を
火の魔女様に助けて頂いたのだよ……。』
レイズ「そうだったんですね…。」
老人『ここの街に居るほとんどの人が、【火の魔女】様によって助けられた
奴隷達なんだよ…。だから、彼女の髪の色と同じ暖色系を身につけているのさ……。』
そんな話をアントラとレイズにしている老人を、アントラの後ろに隠れていたアルテミシアが
ひょっこりと老人の顔を見つめていた。
ひょっこりと見つめていたアルテミシアを見た老人は、驚いたように
話しかけて来た。
老人『…これはこれは…。貴女様は、火の魔女様と同じ瞳をしていらっしゃる…。なんと光栄な事だろうか……。それにその身につけているネックレス……正しく火の魔女様の物…間違いない。』
アルテミシアは少し怯えていたが、老人はアルテミシアに対して優しく低姿勢にしていたので、アルテミシアは、少し近付いて老人に問いた。
アルテ「…おじいさん…。火の魔女様はどこに居るの?」
老人『火の魔女様は、この先にある赤い木々が生えているところにいらっしゃるはずですよ…?【赤い小鳥】さん(微笑む)』
老人の微笑みに、アルテミシアも優しく微笑む。
アントラ「ありがとうございました。さっそく行ってみますね。」
老人『お気を付けて…。あと、これを持って下さい。』
そういうと老人は、アントラ達に大量の金貨を手渡したのだ。
レイズ「…こんな大量の金貨…いただけませんよ?(焦る)」
老人『いいんです…私はもう長くない身。ここまで裕福に過ごせただけでも
十分なのです……。』
アントラ「…分かりました。では、ありがたく……。」
そういうとアントラは、大量の金貨を老人から頂いた。
【魔女の加護】
裕福そうな老人から頂いた金貨を頂いてしまった3人は、宿に泊まることにした。
3人が泊まった宿は、とても今までとは違うほどに綺麗な部屋だった。
どうやら、先程の老人が交渉したということ。
レイズ「…まさか、こんな綺麗な宿に泊まれるなんて、夢にも思ってませんでしたよ!」
アントラ「…確かにな。…でも、なんであの老人はあんなに親切だったのか…。(悩み込む)」
アルテ「……っ。」
アントラ「…どうした、アルテミシア。何か思い出したのか…?」
アルテ「…アントラ。私、あのおじいさん…あった事あるかも知れない…。」
レイズ「ど、どういうこと?」
アルテ「…私がまだ、目が見えてない頃に…、声だけだけど…【男の人】がよく母様の所に来ていたの。
その人がね…よく私を、【赤い小鳥】って呼んでいた。【赤い小鳥】って呼ぶのは、母様かその人しか呼ばなかったの。」
アントラ「…もしかしたら、あの老人はアルテミシアだとすぐ分かったのだろうな。そのネックレスと赤い瞳で。
それで自身が世話になった分…アルテミシアに恩返しをしたかったんだな……。」
レイズ「なるほどなぁ…。(納得する)」
アルテ「…でも、なんで私なの?恩返しをするなら母様でいいはずなのに…。」
アントラ「それは、私達が【アルディア】を探してるって分かったんだろうな。赤い瞳の少女に、ツノが生えた異国の私達。
おそらく昔にアルディアが、彼に私の事を教えていたのだろう。そうでなきゃ
辻褄が合わない。」
レイズ「見ず知らずの人に…ましてや異国の人に話しかけたりはしませんよね…。」
アントラ「…とりあえず、今日は長旅で疲れたろう…寝るとしようか…。」
レイズ「それもそうですね…(眠たそうな声を出しながら)」
アルテ「……っ。」
こうして3人は、宿で1泊をした。
翌日朝食を済ませ…宿から出た時、
宿の管理人から、昨日3人が出会ったあの老人が亡くなったと伝えられた。
アルテ「……。」
レイズ「…やはり寿命だったんですね。あの老人は…。」
アントラ「…そうだな…。でも、老人が言っていた場所に行けば、アルディアを見つけることが出来るかもしれない。」
アントラとレイズが、そのような会話をしていても…アルテミシアは
少し落ち込んだ表情をしていて、喋ろうとしません。
それを見たアントラは、アルテミシアに話しかけました。
アントラ「…アルテミシア。そんなに落ち込む事はない。
どうやら街の人達は…【魔女の加護】を受けた人は、とても名誉な事であり、
その人の死後は、魔女によって動物や違う種族に変えられ…新たな人生を贈ると言い伝えられているらしい…。」
アルテ「…本当に?」‐
アントラ「…街人が言うのだから、そうなんだろうな。」
アルテ「…そっか。ならよかった…。(少し微笑む)」
そうこう話しているうちに、老人が言っていた【赤い木々が生えている】付近までたどり着いた。
レイズ「…よいよですね。アントラ様…。」
アントラ「先に進もう…アルディアに会うぞ。」
3人は、赤い木々が生えている森に入って行った。
赤い木が生えているのは、手前しかなく…その後は、木々がまるで道を作っているかのように並んで生えている。
アントラ達3人は、その道をゆっくりと歩いていく…。
しばらくすると、レンガ造りの小屋にたどり着く。
アルテ「…こんなところに、小屋があるよ?」
レイズ「…灯りが付いてるけど…誰も居ないみたいですよ…。(辺りを見渡す)」
アントラ「大丈夫。もう来るよ……。」
アントラの言った通り、近くから誰かの足跡が聞こえてきて、3人の後ろに
足を止めた。
アントラは、振り向き…こう言った。
アントラ「…久方ぶりだな、アルディア。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます