第11話 〘過去編‐レイズ視点‐〙
レイズ「…そう、あれは数百年前の冬になるな……。」
レイズは静かに昔話を話し始めた………。
[レイズの声]
[数百年前…、
ツノ族は今よりは少なく、人間達によってツノ狩りの被害は人知れず多く発生していた。
人間達は、ツノ狩りをして大儲けしていたんだ。
だから、我々ツノ族は、この山々や木々に覆われたこの街を選んだんだ。
でも、状態は変わらなかった。
僕も当然、被害に遭いそうになって必死に逃げた。
寒い冬の吹く中で見つけたのが、この洞窟さ。]
レイズ『寒い…誰かっ……いませんかっ!?』
言葉を繰り返しながら、レイズは歩いていく。
『……誰だ…騒がしい…』
遠くの方から、低く、周りに響くような声が聞こえてきた。
声のする方へ歩いていく…。
レイズ『…なんだ、ここは…まるで別世界だ……。』
『お前は誰だ…!何故ここに来た…!』
レイズの目の前に居たのは、漆黒の洞角を持った人間の姿……
後のアントラである。
レイズ『すみません…!でも、追われていて!!』
アントラ『…ツノ狩りにか?』
レイズ『…何故分かったんですか!?』
アントラ『…お前の記憶を見させてもらった…。お前たちは、私の【末裔】なのだな…。随分と姿が変わったものだな。』
レイズ『…末裔?どういう事?』
アントラ『私は【竜族】だ。仲間も殺され…孤独になり、この場所にとどまったが…【また】騒がしい奴が来たものだな。(呆れながら)』
レイズ『…またって事は、誰か居たんですね!?その人に助けを…』
アントラ『それは無理な話だ。その者はもう居ない…私のツノと引き換えに去ってしまったからな…。』
レイズ『…そんなっ…!』
アントラ『…だが、1ついい方法がある…。』
レイズ『なんですか!?教えてください!!』
アントラ『…それは、【人間の姿になること】だ。そうすれば、ツノ族は繁栄し…豊かになるはずだ…。ただし……。』
レイズ『…ただし?』
アントラ『…我々の種族は、寿命が長いが、これは【竜族】の場合だ。
お前がもし、長寿を得たとしても…お前の大切な家族が先に途絶えてしまうぞ…?それでもいいのか?』
レイズ『…っ(揺らいでるような感情)』
アントラ『また、来るがいい。お前の決断を早める事はしない。』
[レイズの声]
[僕は、アントラ様の提案に迷っていた。
だって、聞いたことない話がいっぱいあったからね。
ツノ族でも、【鹿】とか【牛】、【羊】のツノ族は知ってても……
【竜族】なんて初めて聞いた言葉だったからね。
でも、ツノ狩りの被害は拡大していく一方だったんだ。だから……。]
アントラ『……来たか。決意は決まったか……?』
レイズ『…あぁ、僕達ツノ族を…人間にしてくれ。』
アントラ『…分かった。後戻りは出来ないからな…。』
そういうとアントラは、自分の手首を切り…自身の血を小さい小瓶に入れ、
レイズに手渡した。
レイズ『…これは…?』
アントラ『私の血を飲めば、人間になることはできる….だが……。長寿になるとは限らないに等しい事を覚えておけ…。』
レイズ『…ありがとうございます!!』
[レイズの声]
[僕は、急いでツノ族の仲間にアントラ様の血を分けたんだ。そしたら…
人間にはなったものの、ツノは変わらず出ていたんだ。
まるで、アントラ様と同じ状態になったんだよ。
その後…僕達ツノ族は、試行錯誤しながら街を繁栄していったんだ。
みんな笑顔を取り戻していったし、自分たちのツノが色々使えるのを知っていったんだ。でもそれは、ツノ狩り達の耳にも入って来てしまった。]
【争い】
「おらおらっ!!さっさと寄越せ!!」
街人『やめてくださいっ!!それは私達の大事な資源なんですっ…!!』
「うるせぇ!!(街人を蹴っ飛ばす)」
[レイズの声]
[ある日、ツノ狩り達が街を襲ってきたんだ。資源であった装飾品は奪われ、
ツノ族を無理やり殺していったんだ……。]
「これで俺達は大儲けだァ!!!」
レイズ『それを返せっ!!!(しがみつく)』
「邪魔だ!このガキがっ!!(レイズを刺す)」
レイズ『ぐはっ…!!(倒れる)』
[レイズの声]
[街は、瞬く間に崩壊していった。家族を守ろうとして庇った僕は、瀕死状態になっていた…。もう、街は元には戻らないと思っていた。けど……。]
アントラ『…これは無惨な状態だな……。』
レイズ『…貴方…は……あの時の……(意識が揺らいでいる)』
アントラは、自分の血と黒い粉末を混ぜた液体をレイズに差し出す。
アントラ『…お前が、まだ生きたいのであれば…これを飲め。…無理強いはしない……。』
レイズ『……っ(渡された液体を飲み干す)』
レイズの身体が光り出し、刺された部分は消え、元の状態に戻っていった。
そして、回復したレイズに、自分のツノを粉々にした粉を渡した…。
アントラ『これを、街人に飲ませば、蘇生できる……。【お前みたいに】
寿命は伸ばせないぞ。』
レイズ『僕…みたいに…だって?まさか…僕に飲ませたのは……。』
アントラ『本当は、口止めされていた技法だが…お前が家族を思っていたからな…。勝手ながらそうさせてもらった。』
レイズ『…そうですか…。』
アントラ『…さぁ、行け!効能が効かなくなるぞ。』
レイズ『はいっ…!!』
[レイズの声]
[こうして、アントラ様のツノの効能のおかげで街人は生き返り…
再び繁栄することが出来たんだ。アントラ様はそれを見届けないで、また洞窟に帰ってしまったんだけどね。]
レイズは、帰ってしまったアントラを追いかけ再び、洞窟の中に入って行った。
レイズ『あのっ…お礼を言わせてください…!ありがとうございました。』
アントラ『…あんな事、礼には及ばない…。それに私は、お前を……。』
レイズ『…いいんです。家族には別れを伝えに行きました。
これからは、貴方と共に居させてください。』
アントラ『…それは無理だ。お前に私の世話など…させる訳ないだろう…。』
レイズ『でも、僕は貴方と共に生きて…世界を観たいのです!!』
アントラ『…そのしつこさ、【アルディア】に似てる。』
レイズ『…その人が、あなたを人間にした魔女の名ですか……?』
アントラ『そうだ…。それに私の名前は『アントラ』だ。』
レイズ『…アントラ…アントラ様と呼ばせて頂きます!!』
アントラ『…好きにするがいいさ…。レイズ。』
レイズ『…えっ、今僕の名前を…。』
アントラ『…知らん、聞き間違えだろう……。』
[レイズの声]
[こうして、僕とアントラ様は共に生きていき…過ごす事になったんだよ。
まぁ…色々あったけど…楽しかったな……。]
アントラとレイズは、岩場の上に座りゆっくりする事にした。
レイズ『ところで…【アルディア】って魔女はどういう人なんですか?』
アントラ『まるで炎を纏っているような髪、見透かされそうな深紅の瞳をした女だったよ。私が見てきた魔女の中では美形だった。』
レイズ『へぇ……。見てみたかったなぁ…。』
アントラ『彼女に会うのはおすすめしないぞ。』
レイズ『なんでですか?』
アントラ『…彼女は…出会った時に分かるさ…いつかな。(苦笑い)』
レイズ『…は、はぁ……。』
アントラ『…それで?これから私と共に居ると言ったが……、まさか…ここに居座る気か?』
レイズ『え、そうですけど……。』
アントラ『申し訳ないが、この洞窟は既に【竜殺し】に目を付けられている。
またレイズを怪我させる訳には行かない。』
そういうとアントラは、辺りを行き来しながら悩み始めた。
レイズ『(なにかを思い出して)…アントラ様、いい場所がありますよ!?』
そういうとレイズは、アントラを連れ…山々を抜け…街を渡り…
森を入った奥深くの先まで歩いていった。
アントラ『ここは……?』
レイズ『元々この屋敷は、幽霊が出るとかの噂があったりしましたが…
ただのボロいだけですよ。安心してください。』
アントラ『…なら、こうしたらどうだ?』
アントラは、指をまるで指揮者のように振っていく。
すると今でも崩れそうだった屋敷が綺麗な状態になっていった。
レイズ『すっ、凄いっ……これは魔術ですか!?』
アントラ『これは【修復】するだけのものさ。誰でもできる。』
レイズ『でもこれで、長く住めますね!!(目を輝かせながら)』
[レイズの声]
[こうして僕達は、あの屋敷を見つけて住むようになったんだ。家財道具も新しくしたり、直したりしたなぁ…。]
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