第9話【漆黒のダイヤ】

しばらくして2人は、森から抜け出した。

街は、いつも通りの賑わい方をしていていたが…アルテミシアは興味津々で

周りを見渡す。


アルテ「わぁ…。ツノが生えた人がいっぱいいる……。」


アントラ「(微笑みながら)この街は、我々ツノ族しか居ないんだ。山々も入り組んでるから、人間も入って来ない。」


アルテ「…へぇー。こんな街…初めて見たよ。」


アントラ「…さぁ、アルテミシアの服を買いに行こうか。」


アルテ「うんっ…!」


アントラは、アルテミシアと手を繋ぎながら街を散策し…

服屋に寄りアルテミシアの服を買ったりしていた。


その時、またもや騒がしい音が響き渡る。

またもや、ツノ狩り達が現れ…標的にされたツノ族を捕まえ

狩ろうとしている。


それを目撃したアルテミシアは、アントラの袖を引っ張り…


アルテ「…アントラ…あの人たち…誰…?」


アントラ「…あれはツノ狩りだよ。あいつらは、我々のツノを狙ってるんだよ。私達は、ツノ狩りに標的にされないようにしてるんだよ。」


アルテ「でもっ…あの人死んじゃうよ!?助けないと…。」


アントラ「…助ける?……私には出来ない。」


アルテ「…じゃあ、私が行く!」


そういうと、アントラの手を離しツノ狩り達がいる所に向かってしまう。



アルテ「…ちょっと!!その人離しなさいよ!」


『あぁ?なんだ、このガキは…邪魔すんじゃねぇ!!』


そういうとツノ狩りは、アルテミシアに大きな刃物を振ろうとしましたが、

アルテはそれを察したのか、

その場から逃げ、

標的にされたツノ族をかばい、ツノ狩りの男を睨みつけました。


『簡単に逃げ出すとは…いい度胸してんじゃねぇか!!まとめて狩ってやるよ!』


ツノ狩りは、アルテミシアとツノ族の前に刃物で刺そうとした、その時

大きな影が、2人に覆いかぶさったのです。


アルテ「…アントラっ!?」


覆いかぶさった衝撃で、深く被ったフードが取れ姿が露わになる。


『…見つけたぞ!!「漆黒の‪ダイヤ」……!!』


ツノ狩りはアントラのツノを見た途端、興奮気味にそう言った。



アントラ「…やはり、私を探していたようだなぁ……

だが、私を倒せるかな?そんな武器で。」


アントラは、2人に背を向けツノ狩りを睨みつける。


『俺はこの時を待ってたんだ!!「漆黒のダイヤ」さえ手に入れば、

俺は金持ちだァ!!!』


ツノ狩り達は、刃物を持ちながらアントラに向かって来る。



アントラ「…『私には効かないぞ。そんな刃物は。』」



そういうとアントラは、ツノ狩りに背を向け…2人を連れていき

離れた場所に行こうとする。


『貴様っ!俺を馬鹿にしやがって…………っ!?』


ツノ狩りは、手に違和感を感じ辺りを見渡している。


『無い!!俺の武器が無いっ!!さっき、手に持ってたのに!!』



アントラ「…お前達の武器はこれかー?随分脆くできてるんだな。」


そういうとアントラは、ツノ狩りの武器をツノ狩りに見せつける。

その後、ツノ狩り達の前に行き…目の前で武器を粉々にしてしまった。


『あぁ!?俺の武器がぁ……!!』


アントラ「…これでもまだ、俺のツノが欲しいのか……?

欲しくなければ…『反対方向を向いて去れ、外道が。』(見下す様に)」


『ひぃっ!?すいませんでしたぁああああああああ!!』


ツノ狩り達は、アントラ達と反対方向に向かって走り去ってしまった。



アルテ「…アントラ!!(走ってくる)」


アントラ「怪我はないか、アルテミシア。(いつもの優しい表情で)」


アルテ「大丈夫!標的にされたツノの人。無事帰って行ったよ。」


アントラ「…よかった。」


アルテ「…それよりアントラ。さっきのは何!?アントラの言葉通りに動かされてたよ、あのツノ狩りの人達。」


アントラ「…あれは…なんでもないよ。」


アルテ「…(今、話逸らしたな…)」


こうして、アントラとアルテミシアは楽しく探索したのでした。


その頃レイズは、夕食の準備を進めていた。


レイズ「アルテとアントラ様、大丈夫かなぁ…。何事もなかったらいいけど…。」


屋敷の窓には、雪が降り始めていた。

レイズは、ふと…アントラと出会った頃の事を思い出していた。


レイズ「…僕とアントラ様が出会ったのも、こんな雪が降っていた頃だったっけな…。懐かしいなぁ…。」



昔の思い出に、浸りながら作業していると、玄関の音がした。

レイズは、アントラとアルテが帰ってきたと察しいつも通りに玄関に向かって行く。



レイズ「アントラ様、アルテ!おかえりな…さ……い…。」



レイズが玄関の扉を開けた時、目の前に居たのは【1人の女性】だった。


女性は、フードを深く被っているため顔は見えていない。しかも一言も

喋らないのだ。



レイズ「…あの、どちら様ですか…?」



レイズが話しかけても、喋らない女性は、レイズの胸ポケットに指を指す。

そして、重い口を開く



『…アントラに、それを渡しておくれ…。きっと…役立つ時がくる…。』



レイズ「…そ、それはどういう…あれ、居ない……。」

レイズが言葉を発した時には、既に女性の姿はなく…目の前には、

帰ってきたばかりのアントラとアルテミシアの姿があった。



アントラ「…どうした、レイズ。なにかあったか?」


レイズ「今、女の人が居て……それで……。」


アルテ「…玄関で私達が見たのは、レイズだけだよ?」


レイズ「…えっ…?でも確かに、女の人が玄関にいたんだよ……。」


アントラ「…とりあえず、部屋に入ろう。もうすぐ吹雪になりそうだ。」



こうして3人は、屋敷の中に入っていった。

食事をし、片付けをし、落ち着いた頃に、再びアントラとアルテミシアに

先程の話をした。



アントラ「…私に役立つもの…?」


レイズ「…それを言ったきり、消えてしまって……。」


アルテ「その女の人に、指された胸ポケットには、なにも入ってないの?」


レイズ「…さっき見たんだけど、なにも入ってないんだよ。」


アントラ「うーん…私に役立つものねぇ……。」


アルテ「…あ、また悩んでる。アントラってあの悩み方って癖なの?(笑)」


レイズ「僕が初めてあった時から、あんな感じだよ(笑)」


アルテ「…あんな悩み方して、目が回らないのかな……?」



2人がアントラの悩み方に、疑問を持ちながらも待ってる間、たわいのない話をしていた。

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