第6話【少女】


少女が屋敷に来て暮らしてから、1ヶ月が経とうとしていた。



レイズ「…アントラ様。」


アントラ「…なんだ?」


レイズ「…あの少女、屋敷に来てからも全然喋りませんね…。」


アントラ「…そうだな…」


2人は、少女を見ながらも食事をして会話をしていたが、

少女は何も言わないまま、食事にも手を出さないでいた。



レイズ「…なぁ、なんで飯たべないの?」



レイズは、少しばかり強めに少女に聞いた。



アルテミシア「…なさいっ……(小さく喋る)」


レイズ「…なに?聞こえないけどっ…?」



レイズは、少女に詰めよろうとした時、アントラがレイズを止めた。



アントラ「…レイズ、もうやめとけ。彼女を見てみろ。」



アントラにそう言われ、レイズは少女の方を再び向いた。

少女は、怯えながらずっと小声で謝っていたのだ。



アルテ「…ごめんなさい…ごめんなさいっ……」



アントラ「…大丈夫か?」



レイズ「……っ。(なんとも言えない表情をしている)」


レイズは少女に申し訳ない気持ちと、どうして自分の主が

ここまで少女を優しく扱うのか分からなかった。




しばらくして、少女は冷静を取り戻し落ち着いたが、

やはり食事には手を出さないでいた。



今度はアントラが、彼女に問いかける。


アントラ「…少しでもいいから、食べてみたらどうだ?

君が育った所とは違うかもしれないが、味は補償するぞ?」


少女はアントラの言葉に頷き、1口食べてみる。


アルテ「………おいしいっ…。」


アントラ「…よかった。レイズが作った料理は美味いんだぞ?私のお墨付きだ。」


レイズ「アントラ様にそう言われると…は、恥ずかしいですよ。」


レイズは、耳を赤くし照れくさそうにしながらも

後片付けをする。



ふと、アントラは少女に名前を聞いてみた。

少女は、首を傾げている。


アントラ「…もしかして、名前がないのかい?」


少女は、優しく頷く。


レイズ「…名前がないと、手続き出来ませんね…。」



アントラは、またあちこち動きながら考え始めた。

少女は、首を傾げながらアントラを見つめている。


アルテ「…あのひと…なにしてるの?」


レイズ「あれがアントラ様の考え方なのさ。キミの名前を考えてくれるみたいだよ。」


アルテ「…わたしの…なまえ……?」


レイズ「そうさ、名前がないと君をなんて呼べは良いのか分からないし、僕達が『家族』になるには必要な事だからね!」



アルテ「…『家族』…。」



しばらくすると、アントラは少女にこういった。



アントラ「…アルテミシア。今日から君は、そう名乗りなさい。」



アルテ「…アルテミシア……わたしの…なまえ……。」



レイズ「よろしね。アルテミシア!僕は、レイズだよ!」


アントラ「私は、アントラ・ディミッドだ。名前は長いからアントラで

構わない。… アルテミシア。その名前を大切にしなさい。」


そういうとアントラは、アルテの頭を優しく撫でる。



アルテ「アントラ、レイズ。よろしくね…!」


少女は、優しく微笑みながら、二人に抱き着いた。

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