第3章 夢と現実のはざまに…。
待ち合わせの時刻になっても彼女は現れなかった…。
きっと何か用事ができたのだろう。
話しがあると言ったのは彼女の方だったんだがな…。
『もう少し待ってみるか…。』
“気になるなら連絡したら良いのに”
『良いんだよ…そういうのじゃないから。』
“じゃあどういうの?”
『良いんだよ…。』
ヴィ〜ヴィ〜…
『ん?』
『はい…どうした?』
“今日遅いの?”
『いや、待ち合わせしてたんだけど来ないから帰るところだ』
“待ち合わせって先生?”
『誰でも良いだろ…。』
そうやって
『え…?』
“もしもしパパ?”
『かけ直すから…。』
“ちょっ…。”
ピッ!
オレは…夢をみているのか…?
あの頃と変わらない…なぜ…キミが…。
「あなたが心配だからよ〜秀人…。」
いや…夢でも嬉しいよ…。
『美代…。』
「夢じゃないんだけどな〜。」
『え?』
「
『いやいや…。』
言葉の語尾を伸ばす話し方…。
間違いない…美代だ。
幽霊なら他の人には見えていないよな
『お客様お決まりですか?』
「同じものを…。」
いや!見えてるんかい!!
普通に会話してるし!!
「あはは!」
『あははじゃないだろ!』
『まったく…。』
『キミは変わらないな…。』
「
「あ、でも少し老けた?」
ペシッ!
「いった〜い…。」
『悪かったなオッサンで』
「もう17年かぁ〜頑張ったね!」
「ねえ、
『何で…またそれを…。』
「だって、あなたに幸せになって欲しいから」
『キミはそればかりだな…。』
『オレは充分幸せだよ…。』
『そっか…。』
・
・
・
『あの…お客様?大丈夫ですか?』
『え…?』
『あ、大丈夫です…寝てしまっていたようで…すいません。』
19時過ぎていたのか…いつのまにか寝てしまっていたようだ…。
どこからが夢だったのか覚えていないが。
いい夢だった気がする…。
どちらにせよ彼女は来なかった。
ヴィ~ヴィ~…。
『もしもし…。』
“パパ!どこにいるの!?”
『あ…すまん…先生と会う予定だったんだけどさ…。』
“そっか、その言い方だと会えなかったんだ?”
『そうだな…。』
“おかしいなぁ~脈ありだと思ったのに~…。”
『だからいったろ?今帰るよ…すまんな。』
さてと…帰るか。
『すいません…ご迷惑かけました。』
『いえ、体調が悪いのかと心配してました。』
・
・
・
家に着くと秀美が玄関で待ち構えていた。
『おかえりなさい』
『あ、ただいま…。』
『あのさパパ…ごめんね。』
『なにがだ…?』
『いや、変なこと言って…。』
『まあ、おかげで良い夢みれたからいいさ。』
『夢?』
ママと喫茶店で話す夢をみたことを秀美に話した…。
『そっか、ママはきっとパパのことが心配なんだね。』
『そうなんだろな…。』
『いつも言われるんだよ再婚しないの?ってな…。』
『そうなんだ…。』
オレはいつも同じ答えを美代にいう…。
そのつもりは無い…キミとの約束は守れないってな…。
それがきっと美代に心配かけてる要因なんだろうな。
でも、秀美に良い人が現れるまでオレは秀美だけに愛情を注ぎたい。
幼いころに不憫な思いをさせたことが今でも後悔している。
秀美はあの頃のことは一切言わない…優しい子に育ってくれた。
きっと、秀美にいま幸せかと聞いたら“うん”と答えるだろう。
オレたち親子はいまのままで幸せなんだと思う…。
この幸せが続けばオレはそれで良いと思っている。
オレがずっと愛してるのはキミだけなんだけどな?
それじゃ不満か?美代…。
“秀人がそれでいいなら私もいいよ…。”
━━ 数日後 ━━
今日は予定より早めに家を出ることにした。
「じゃ、秀美…パパ先に行くから…。」
「うん、気をつけてね!」
「今日はパパの好きなレバニラ炒めだから!」
「お、おう…言うようになったな…。」
「えへへ…いってらっしゃい。」
オレはいつものように会社に向かっていた。
普段はそれなりに車通りが多いが朝が早かったせいか少なかった…。
信号が青に変わりを走り出したとき横から信号無視をしてきたトラックが
突っ込んできた…。
キキィーーー!!
ガシャーン!!
オレは何が起きたのか理解できなかった…。
・
・
・
・
もし…いままでのことが全部夢で…いや…秀美が産まれたことは
現実で…キミが生きていて…そして幸せな家庭を築いている…。
目が覚めて…そうだったら…どんなに良いか…。
でも目覚めてもなにも変わらないんだろうな…。
そんな都合よく行くわけがない…。
オレは美代が死んだことを受け入れられなくて産まれたばかりの秀美を
美代の母親に預けっぱなしで殆ど顔も出さなかった。
それなのに秀美はオレの事を世界一だって…そんなわけないのに…。
いままでの付けが回ってきたのだろうな…。
目が覚めたら全てのことが夢であったなら…。
やり直せたらどんなにいいか…。
・
・
・
・
それから2週間眠りっぱなしだったらしい…。
『先生!北村さん意識戻りました!!』
目を開けたとき…なにかが変わっていた。
『バカ秀人!!死んじゃったかと思ったじゃない!!』
『あ…すまん…。』
『え…?美代?』
『どうして…。』
『どうしてはこっちのセリフだよ~!!』
なにがなんだか…さっぱりだ…。
事故があって…いや…そもそも美代がなんで…?
オレはやっぱり死んだのか?
『美代…?』
『なに?』
『あ、あのさ…これは…夢なのか…?』
『夢だったらいいよね~…。』
ペシペシ!
『いてぇよ…!』
『良かったね夢じゃないよ?』
『あのさ…秀美は?』
『秀美?だれそれ…?』
“だれそれ?”
『いや…オレたちの子供だよ…。』
『なに?まだ夢見てるの?』
『え…?』
『だってあなたが願ったじゃない…。』
『願った?なにを?』
『いままでのこと全部夢でやり直せたらって』
え…なにがどうなってるんだ?
オレが願った?
こんなのを望んだんじゃない…。
オレが願ったのは…オレたち親子が幸せだったらそれで良い
ただ…それだけなんだよ…。
“ホントにいいの?”
あぁ…オレは…。
キミがいない世界はイヤだ…だけど…。
秀美が産まれたのも確かなんだ…。
“秀人…あなたが必要な人が…。”
“あなたの帰りを待っている…。”
“だから今はおやすみなさい秀人。”
それからオレはまた眠った…。
今度は間違いのない現実であればいい…。
いまオレは夢と現実のはざまに居るようだ
そして…再び目覚めたとき現実に戻れる。
・
・
・
先生!北村さんの意識が戻りました!!
『美代!』
『どうしたの…秀人…。』
『あ…そっか…赤ちゃん産まれたあと…意識失ってたのか…。』
『あぁ…死んだんじゃないかと思ったぞ!』
『あはは…ごめん…。』
『赤ちゃんは…?』
『大丈夫だ…頑張ったな!』
『そっか~…よかった無事に産んであげられて…。』
これは…?
17年前?それとも現実?それとも夢なのか?
ずっと長いあいだ靄の中に居た気分だ…。
もしかすると…並行世界というやつか?
もう一つの世界の美代が死んだ…現実世界の美代は生きてる…。
その美代が死んだ世界にオレは行っていたのだろうか…。
美代が出産して意識を失った時に勝手に絶望して美代がいない世界をつくりだしたのかもしれない…。
もうひとつ謎が…オレが交通事故で意識不明になった件は…?
それが転機だったのか…?
そっちの世界のオレがそうなった事でいくつかの分岐が出来てしまった?
これがオレの願った世界…?
『秀人?赤ちゃんの名前…決めた?』
『あぁ…秀人の“秀”と美代の“美”をとって秀美にしようかと…。』
『秀美かぁ…いいね~…。』
『秀人~私との約束覚えてる?』
『ん~…忘れた!』
『いじわるだね…。』
『どっちがだよ…あんな約束守れるわけないだろ?』
『そっか…ごめん私がどうかしてた…ね。』
数日が経ち…美代の再検査が始まった。
脳腫瘍の再発…。
こればかりは…。
検査結果はすぐにでた…。
MIR、CT、血液検査
『北村さん…これは奇跡です!!』
『え?』
CT画像をみせられ説明された…。
出産前に検査したときのモヤが消えていた…。
『これは…?』
『再発はしてません…というより消えてしまってます…。』
『長い事医者やってますけど…こんなこと信じられませんよ…。』
『よかったな美代…。』
『それじゃ…私まだ生きられるんですね!』
『ホント奇跡ですよ…。』
だが定期的に検査を受けなければ安心はできないそうだ…。
しばらくはかかるだろう。
これがオレの望んだ世界ならこのまま3人で幸せに暮らせたら
どんなにいいか…。
━━3年後━━
11月某日…。
秀美が3歳になった…。
美代も病気してたのかってくらい元気を取り戻している
いいことだ…。
『ほら、パパ早く支度して~』
『おう…七五三祝いの写真の予約時間まだだろ?』
『その前に神社に行くんでしょ~?』
『あ、そうだった…。』
『パパは忘れっぽいですね~秀美はパパに似たらダメだよ~?』
『うん!』
おいおい…。
『秀美~…パパより良い人見つけたらちゃんと言うんだよ~?』
だから…3歳児になにをいってるのキミは…。
“パパよりいいひと?”
“そんなのいないよ?だってパパは世界一だもん!”
『そっか~パパは世界一かぁ~!』
『うん!』
オレは秀美をギュッと抱きしめた…。
愛しくてたまらなかった…。
『あぁ~秀美ばかりずるい!!』
おいおい…キミは娘にまでヤキモチを妬くのか?
秀美…パパとひとつ約束してくれないかな?
約束?いいよ~…。
じゃあ…キミとの約束は…。
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