第2話 住宅内見

 俺の名前は、三高みたか 生男いくお。バッファローの背中に乗ってプロポーズをし、見事、彼女に「YES」と答えをもらった男だ。

 前回は、名前すら与えられていなかったが、こうして名持ちの人間として見事進化を遂げた。

 そして今は、晴れて婚約者となった美里と、一緒に暮らす部屋を内見しているところだ。


「こちらの物件は、いかがでしょうか?

 日当たりも良く、歩いて十分のところにスーパーもあります。

 2DKで、築年数は古いですが、リフォーム済みですので水回りも綺麗です」


 不動産会社の内見案内人に言われて見ると、確かに床から壁、トイレ、浴室も全てピカピカに光輝いている。それに、ここならば、俺と美里の職場へも通いやすい。ここにしようか、と俺が答えようとした時、美里が言った。


「もっと頑丈な家にしましょう」


 美里の顔は、何故か青ざめている。


「だって、何かが襲ってきたら押しつぶされちゃうわ!」


「そ、そうだね。地震とか、怖いもんな。

 じゃあ、もっと丈夫な耐震性のある住宅は、ありませんか?」


 次に案内された住宅は、築二年の真新しい2LDKの住宅だった。

 少し家賃は上がるけど、ここなら耐震性もばっちりだし、ここにしようかと俺がいうと、そうね、と美里も頷いてくれた。だが、その表情は、どこか不安そうだ。


「では、こちらの契約書に押印をお願いします」


 不動産会社へ戻って、出された契約書に目を通し、俺が鞄の中からを取り出した。


「ひ、いやぁ~~っ!!」


 突然、印鑑を目にした美里が悲鳴を上げて、外へ飛び出して行ってしまう。


(な、何故だ……もしかして、やっぱり平凡な俺が選んだ平凡な家じゃ、彼女を満足させられないのか?)


 俺は、探した。彼女を満足させられるような、すごい物件を。そして、見つけた。


 俺は、美里を誘って、ある賃貸物件へ向かった。

 そこは、一見、普通に見える2LDKの賃貸物件だ。

 だが、押し入れを開けると――――そこは、異世界ダンジョンへと繋がっていた。

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