バッファロー男の異世界ダンジョン

風雅ありす@『宝石獣』カクコン参加中💎

第1話 決意表明

 俺には、三分以内にやらなければならないことがあった。


 腕時計を見る。

 そろそろ彼女との待ち合わせ場所へ着く頃だ。

 俺に許された時間は、たった三分――それだけの間に伝えなくてはいけない。


 俺の決意を――!


 話は少し遡る。

 俺には、六年間付き合っている恋人がいる。

 彼女とは、大学時代からの付き合いで、社会人になった今でも関係は良好。

 お互いにそろそろ結婚を意識し始めている。

 社会人になって少しずつ貯めたお金もそこそこ溜まり、俺は、そろそろ彼女にプロポーズをしようと考えていた。


(でも、プロポーズって、どうやったらいいんだ?)


 そう思った俺は、雑誌やテレビ、インターネットを駆使して、プロポーズについての情報を搔き集めた。


 定番は、やはり夜景の見える高級レストランで指輪を取り出し――


『みさと、俺と結婚して欲しい』


『嬉しいっ! もちろん、結婚するわ!』


 ――いや、これではあまりにも平凡すぎる。


 俺は、自慢ではないが、これまで平凡な人生を歩み続けてきた。

 だからこそ、せめて人生の一大イベントであるプロポーズくらいは、平凡を脱して「まさかそんなっ?!」と人から羨望の眼差しを受けるくらいのことをやってやりたい。


 それに、聞いた話では、プロポーズとは、結婚して子供が生まれて歳を取っていった後も、ずっと話題として持ち出されるらしい。それこそ、平凡な内容では、彼女をマンネリさせてしまうのではないだろうか。


 そして、俺が考えて考えて考え出した、究極のプロポーズは、これだ。




 青い空の下、町中に突如、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが現れた。その先頭を走る一匹のバッファローの背に、タキシード姿をした俺が跨っている。


 もうすぐ、彼女との待ち合わせ場所へ着く頃だ。


 前方に、彼女の姿が見えた。驚いている。どうやらサプライズは成功のようだ。


「ミサトーーー!!

 俺とーっ! 結婚ーっ! してくれーーーっ!!!」


「ひぃい……いやぁああああ~~~~~!!!!」


 俺が彼女……ミサトの前を通り過ぎるまで、きっかり三分。


 その後、俺とバッファローの群れは、全てを薙ぎ倒していき、後には何も残らなかったという。

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