第2話 入学式
「マコちゃん起きなさい。朝よー」
お母さんの声が聞こえる。
そうだった。今日から学校だった。
起きなきゃ。
「えいっ」
布団を蹴飛ばして思い切って起き上がる。
お母さんに見られたら怒られるかな。
でもお布団から出る時は気合いが必要なのだ。
居間に行くと食卓の上に朝御飯が並んでいる。
「おはよー」
「おはよう。ご飯と味噌汁は自分でよそって来なさい」
「はーい」
僕は流しの方へ行って、鍋からお玉でお味噌汁をお椀に入れた。
そしてご飯をよそおうとしてお櫃に手をかけたその時、世界が揺れた。
いや、揺れたのは自分自身だった。
一瞬気を失ってたみたいだ。気がつくと床に倒れ込んでご飯まみれになっていた。
「あちっ、あちち」
ご飯粒を振り払いながら、僕は立ち上がった。
やけどの跡がつかなければいいけど。
皮膚がちょっと赤くなっていた。
「大丈夫?あんた何やってんのよ」
お母さんが駆け寄って来た。
「どうした」
お父さんも、読みかけの新聞を放り投げて近寄って来た。
どうやら僕が一瞬きを失ったのは気がついてないみたい。
「えへへ、こけちゃった」
僕は笑って誤魔化して大丈夫アピールをした。
「もう気をつけなさいよね。私が片づけるから、さっさと食べて学校行く準備しなさい。」
「驚かすなよ。もぅ」
「はぁい。ごめんなさい」
僕は謝って食卓へ向かった。
「行ってきまーす」
僕は真新しい制服とピカピカの靴で玄関を飛び出した。
「気をつけて行ってらっしゃい」
お母さんの声を背中に聞きながら学校へと向かった。
「マコちゃーん」
あっこの声はユカちゃん。
「おっはよー」
振り向くと、走って来たのか少し上気したユカちゃんがいた。
「おはよう」
僕たちは並んで歩き出した。
「ユカちゃんはクラス分けもう見たの?」
「うん。昨日メグたちと見て来た。マコちゃんと同じクラスだよ。1組。メグもだよ。ナギは3組だった」
「ヒロとノブは?」
「えっ、知らなーい」
「冷たいなぁ」
などと喋っているうちに学校に着いた。
「おはようマコユカ」
「ノブッチおはよー。名前繋げないでよぅ」
「おはようノブ」
「俺もお前も1組だ。一緒に行こうぜ」
「ヒロは?」
「まだ来てないみたいだな。あいつも1組だ」
腐れ縁だなぁ。
教室に入るともうほとんどの席が埋まっていた。みんな早めに来てるみたいだな。
この後みんな揃って、入学式のある講堂に向かう事になる。
「みんな揃ったかな」
先生が入って来た。歳の頃は30前くらいかな。すらっとした、イケメン系だけどそこはかとなく残念臭が漂っている。
そう言えば、ヒロはどうしたんだろう。
その時、廊下をバタバタ走る音がして、引き戸がバタンと乱暴に開けられた。
振り向くとヒロだった。
「す、すみません」
みんなの注目を浴びて恥ずかしくなったのか、小さな声で謝ってヒロは空いている席に座った。
先生は何か言いたそうにしていたが、気を取り直してみんなを見回した。
「今度こそ揃ったみたいだな。私はこの1組の担任のハルナ=ウォーカーだ。よろしくな」
ハルナ先生が出席を取った後、僕らは講堂へ向かう事になった。
「ヒロ、何やってんだよ」
「初日から寝坊かよ」
「昨日眠れなくてさぁ…」
僕たちが喋りながら講堂への渡り廊下を歩いている時、それは起こった。
「エマージェンシー」
「観測対象周辺で時空変動あり」
「観測装置との通信が途絶えました」
「復旧急げ。α隊から2名現地調査に向かわせろ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれれ、出番が無いぞ。主役は俺の筈なんだけどなぁ。
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