第5話(解決への糸口?)
自分の寮まで帰って来たけれど、道中人に会う事はなく、また寮には人間も獣人も人っ子一人いなかった。
(やっぱりそうよね……)
流れで、自室に向かうと鍵が開いていた。
「あれ? 鍵が開いてる」
そうか、昨晩は新聞を読みながら寝落ちしてしまったから、鍵をかけ忘れてしまったのか。ルルカに『不用心極まりないな』なんて言われちゃいそう。
自室の扉を開く。すると、そこにはいつもと変わらない光景が広がっていたが、一点だけ間違い探しのように、いつもと違う点があった。それは、ベッドの上の新聞紙である。
「なんでベッドの上に新聞紙が……まさか。いや、でも」
ベッドの上の新聞紙を見た瞬間、私の脳内であることがよぎった。
「ひとまず、カフェテラスに行ってルルに報告しなくちゃ」
――カフェテラスへ行くと、ルルカは既にカフェのテーブルに着席していた。
「おお、遅刻しなかったか」
「失礼な。そんな毎回遅刻しないわよ。それより分かったことがあるのよ」
「分かったこと?」
ルルカは首をかしげる。そして私は、先ほど脳裏をよぎったことをルルカに告げる。
「神隠しにあったのは、アミリナスの人達じゃない。――私たちよ」
「なに?」
ルルカは眉間にしわを寄せ、欺瞞に満ちた目で私を見る。
「どういうことだね。寮になにかあったのか」
「寮の私の部屋に、私が昨日寝る前まで読んでいた新聞があったの。なんて言ったらいいのか分からないけど、寝る直前と同じ状態で」
「それでなぜ私たちが神隠しにあったことになる?」
「これはあくまで私の仮説だけど、私たちだけ時間軸は同じだけど、別の世界線に来ちゃったのよ」
ルルカは難しそうな顔をしている。私の説明が伝わっていない証拠である。
「よくわからんな。私たちだけ、君の言う『別の世界線』に飛ばされて、元の世界では今まで通りの日常生活が営まれているということかね?」
「うーん、まぁそんな感じ!」
ルルカはキャスケットをかぶり直し、テーブルに肘を立てる。ルルカがなにかを考えている証である。
――しばらくして「うーんわからん!」とルルカは天を仰いだ。
「ごめん説明不足で……」
「いや、君の言っていることは概ね理解したよ。おそらく仮説も合っているだろう。しかし、どうすればこの世界から脱出できるのか分からん」
確かに問題はそこだった。まだ仮説とはいえ、神隠しにあってしまった私たちはこの先どう行動すれば元の世界に戻れるのか。
そもそも、元の世界に帰ることができるのか。
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