第6話(真相究明①)
気がつくと日が落ちてきて、辺りは夕日色に染められた。
私とルルカは、カフェテラスであれこれ考えたが解決策はまるで浮かばなかった。
「ルルの都市伝説の知識でなんとかならないの?」
「残念ながら脱出方法までは分からんな。正体とされるものや事例はいくつか知っているが……そもそも神隠しに脱出方法があるのかすら定かではない」
「ずっと私たち二人だけだったりしてね」
「私はごめんだね……」
ルルカはため息をひとつ吐いた。
ただ、このままでは本当に一生二人で暮らすことになってしまう。私はそれでもいいけれど、ルルカがそのうちストレスで爆発してしまうだろう……。
『神隠し』からの脱出方法――現に数十万人が行方不明に、神隠しにあっている。反して「行方不明者発見」のようなニュースは目にしない。つまりは誰も、神隠しから脱出できていないということだ。背筋にゾッと寒気が走る。
「それより今日よ!」
「な、なんだいきなり」
「今日はどうするのよ。ルルカ、寮はどうだったの」
「あ、あぁ部屋の鍵がかかっていて部屋に入れなかったが」
「もう日が落ちてきたわ。今日はどうするのよ」
「なに、カフェテラスで寝るさ」
「ダメよ! 風邪ひいちゃうじゃない」
「君は親かなにかかね……」
「私の寮に来なさい!」
「えぇ……」
そんなこんなで、この日の夜は寮の私の部屋でルルカと過ごすことになった。
※
カフェテラスから寮まで二人で歩いているうちに日は落ちて辺り、はすっかり真っ暗になった。
部屋に着いて電気をつけると、部屋がパッと明るくなった。少し不安だったが、電気や水道などのライフラインの方は安心してよさそうだ。
「これが君の部屋か」
「自由に過ごしていってね」
私が言い終わる前に、ルルカはソファにダイビングしていた。一日中歩き続けていたんだ、無理もない。
「パイプ吸いたい……」
「あいにく私の部屋にそんなもの無いわよ。ていうか未成年なのになんでパイプなんて吸ってるのよ」
「物があるのだから、吸いたくなるのだよ」
よく大学を除籍にならないな……これがお嬢様パワーか?それか単にバレていないだけか。ともかく現状を打破できたら禁煙を勧めよう。
「ところで君、夕食はどうする」
「夕飯なら寮母さんが……いないんだったわね……しょうがない、市場に行ってなにか貰いにいきましょう」
「私はここで休んでいるから、君、頼んだよ」
「ルルも行くのー!」
そんなこんなで夜の街へ出かけることとなった。寮には例外を除いて門限があるから夜の街を散歩する機会なんて滅多にない。
大学を出るとそこは別次元だった。まるでイルミネーションのようにキラキラと街が輝いている。
「わぁ綺麗ね」
「アミリナスでは普通の光景さ。しかし街灯はともかく、人がいないのに家に光が灯っているのは不思議だな」
「言われてみれば確かに不思議ね」
日中と同じようにベランダへ不法侵入をして家の中を確認するがやはり誰もいない。ただ、なんとなく違和感を感じた私は部屋の中を凝視する。
「なんだね、誰かいたのかね」
「いいや、誰もいないんだけど、なんか変だなと思って」
「ッ……君、あれを見たまえ!」
「あれ?」
「テーブルの上をよく見たまえ」
「あ、あれって」
そう。その家のテーブルには、いやこの際食卓といっても差し支えないのかもしれない。その家の食卓には、湯気の立った料理が並べられていた。今まさに運ばれたであろう料理が。
「あれって誰かが作ったってこと」
「いや、それよりも他の家を見てみよう」
「う、うん」
――結果的に、家ごとに差はあれど食卓に料理が並んでいる家がほとんどだった。無論、どの家も日中にはなかったはずだ。
念のため調べたすべての家の呼び鈴を鳴らしたが、どこの家も、誰も出てくることはなかった。
「なんか余計謎が増えちゃったわね……」
「そうか? 私はいい発見ができてホッとしているよ」
ルルカは顔をニヤつかせながら言う。
「いい発見? なにかわかったの?」
「あぁ、もしかしたらこの神隠し、打破できるかもしれない」
「ええ、解決策がわかったの! 教えて教えて」
「うむ、なら歩きながら話そうか」
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