第7話(真相究明②)
「君は確かカフェテラスでこう言ったね、『私たちだけ時間軸は同じだけど、別の世界線に来ちゃった』とそれが肝だったのだよ。君の言ったことは、あながち間違いではなかったというわけだ」
『時間軸は同じだけど、別の世界線に来ちゃった』。確かに私が言った言葉だけれど、この言葉が肝?
「あくまで私の予測だが、市場にはなんの商品も並んでいないだろう」
「えー! それじゃあ私たちの夕飯が……」
「夕食の心配をしている場合かね……それからもうひとつ、この状況を打開する案がひとつある」
「それって?」
「一度、このアミリナスから出ればいい」
「え? どういうこと?」
ルルカの言い分はこうだった。
私とルルカは、なにかしらの力で神隠しにあってしまった。しかし、実際には神隠しにあったのではなく、私の言った時間軸が同じ別の世界線に来たということで正解、正確にはルルカ曰くプチタイムトラベルをしたらしい。タイムトラベルではなく、「プチタイムトラベル」なのは世界線があまりに私たちが元々いた世界線に近しいから、という理由だった。ルルカの言うことは小難しくて理解に苦しむ。
「つまりはね、私たちはAの時間軸とBの時間軸の間の時間軸、A´の時間軸とも呼べる世界に来てしまったのだよ。この時間軸はAの時間軸と大差がない。だから、さっきから見ている家に夕食が並んでいたのだろう。そして、もし仮にこの説が正しいとするならば、市場の食材たちはもう既に片付けられているはずだ」
ルルカの講釈を聞いている内に市場に着いた。すると、ルルカの言う通り、市場には一切の食材も置かれておらず、シートがかけられていた。
「本当にルルの言った通りだわ……すごいじゃない!」
ルルカは頬を赤らめて、耳をぴくつかせた。
「そして、この時間軸から脱出する方法は、ずばり」
「アミリナスから出ればいいってことね! でも、なんで?」
「物事、いや世界にはあらゆる境界というものが存在する。私たちのいるアミリナスがA´の時間軸だったとしても、アミリナスの外がA´の時間軸とは限らない」
「なるほど、じゃあとにかく脱出できるってことね!」
「まぁあくまで賭けだがね。それじゃあ門まで向かおうか」
「うん!」
私とルルカは速足でアミリナスの正門を目指した。
――「こ、これは……」
ルルカは膝から崩れ落ちた。正門が閉まっていたのだ。
こうなると明日の朝を待つしかない。
「大丈夫よルル、一緒に明日の朝まで待ちましょう」
「お腹が空いたのだ……」
「私もそうだけど……」
結局、謎が解けたのか否かも分からず、市場で食料を調達することも叶わず、私たちは再び大学の寮へ戻ることとなった。
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