第4話(神隠し事変③)
ルルカは必死にお屋敷の大きな門を開けようとするが、一向に開く気配がなかった。
「んっあぁ、開かない。うーん! はぁはぁ、君も見ていないで手伝いたまえ」
どうせ開かないんだろうな、なんて考えつつ一応手伝うと、これがまったくびくともしなかった。
「ルル、この門ってもしかして、内側からしか開けられないとか、オートロックがかかってるんじゃないの」
「そうか!」
なにかを思いついたようにルルカは呼び鈴を鳴らしながら「じいや、じいや! さっさと門を開けたまえ!」と半ギレで言うが、無論反応はない。
「ええい、こうなったらよじ登ってでも」
ルルカが3メートルはあるであろう塀を登ろうとするので、私は慌てて止めた。
「やめときなってルル。きっとお屋敷の人達も神隠しにあっちゃったんだわ。そうだ、大学に行ってみない? 大学に行けば誰かしら人がいるかもしれないわ」
「望みは薄いが、今はそれしかあるまいね」
というわけで、私とルルカは大学に向けて歩み出した。
道中こんな会話があった。
「あれもこれも、君がおかしなことを言ったからこうなったんじゃないのかね」
「どういうことよ」
「ほら、神隠しがどうのこうの言っていたじゃないか。だから、アミリナスの住民が神隠しにあってしまったのだよ」
「そんな、私のせいってことはないでしょ」
「君の事だ。『アミリナスの人達がみんな神隠しにあえば、私の言っていることが証明できるのになー』とでも考えていたのだろう?」
「そ、そんなこと考えてないわよ! 失敬な」
嘘である。本当は新聞を読みながらちょっぴり考えていた。
しかし、さすがにアミリナスの住民全員が神隠しにあえばいいなんて考えていない。せめてもう2、3万人行方不明になってくれれば、ルルカも少しは興味を持ってくれるかなー程度に考えていた。
とはいえ、実際にこうして街の住民が消えてしまうと、我ながら恐ろしいことを考えていたものである。
「そうだ、君、私に顔を向けたまえ」
「顔を向ける? こんな感じでいいの?」
私はルルカの前に顔を突き出した。少し恥ずかしい。
ファーストキスでも奪われてしまうのかと身構えていると、ルルカはなんのためらいもなく私の頬をつねってきた。
「痛い痛い痛い! 痛いよルル、なにするのさ」
「やはり、夢ではなかったか」
「そういうのは自分の体でしなさい!」
「痛いのは嫌だ」
「私だって嫌よ……」
そんな雑談をしている内に大学へ着いた。
幸い、大学の門は開かれていてあっさりと中に入ることができた。
ただ……やっぱり人の気配はこれっぽっちも感じることはできなかった。
すると、ルルカが、
「一旦、互いの寮に戻るというのはどうかね。誰かしらいるかもしれない」
と、提案してきた。
「そうね。それじゃあ……三十分後にカフェテラスに集合しましょ」
「うむ。それじゃあ」
こうして私とルルカは、一時的に別行動をとることになった。
誰かいてくれればいいけれど……。
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