5 いざ、出発
「気でも狂ったか? 俺はマイケル・ショーン、お前はジョー・タキザワだろ。全米を震撼させたジャパニーズアメリカンラッパーとして一躍有名になった──」
俺はそれからしばらくの間、自慢話…いや、「自分」話を聞かされ、困惑するしかなかった。どうやらこのギャングメンバーらしき人物は、俺をタキザワなる人物だと思い込んでしまっているらしい。しかも、俺のマネージャーを務めているという。
「時間がない。そろそろ出発だぞ」
「え、ええっ!?」
「俺のキャデに乗るか、それともあんたのインパラで付いてくるか?」
「えーっ…どうしよう…じゃ、俺も運転していきます」
「しっかり付いてこいよ、飛ばすぜ? それと、ジュース要るか?」
はて、と思案していると、
「俺のおかんの農園でとれたリンゴで造ったやつ。お前も好きだったろ?」
「え、あぁ、まぁ……」
左ハンドル。ありがたいことに、オートマだ。
それらを難なく操作できている自分に驚いたが、体が勝手に動いているのだ。アメ車は相当故障しやすいと評判だが、これなら仮にエンストなり何なりしても自分で修理できるかもしれない、と妙な自信が溢れ、急な展開とはいえ一時の安堵の刻を得ることができた。
☆ ☆ ☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます