第4話 売れない作家、キメラを圧倒する

「またここに来るとはなぁ……」



 俺はまた航空記念公園ダンジョンに足を踏み入れていた。


 美波はウッキウキでこのダンジョンについて調べた手の情報を俺に教えてくれる。



「ここさ、手ごろな大きさのダンジョンとして有名で! 初心者から中級者向けで人気のスポットなんだよ!」

「へー、そうなんだ」

「はじめて来たけどすっごい賑やかだね! わわ、有名メーカーのダンジョン用品店じゃん!」



 この盛況ぶりに美波はすごい耳を輝かせていた。



「そだねー、すごいねー」

「ちょっとカイ兄、ノリ悪いなぁ」



 なんて言うか、バイト先に戻ってくるような居心地の悪さもあるんだよ……


 ゲンナリしている俺をよそに美波は両手を広げて大手ダンジョン用品ショップに突撃していた。



「やれやれ」



 追うようにショップ店内へ。


 ふむ、武器や防具は昔と比べてずいぶん品揃えが豊富でリーズナブルになっている。



「ねぇカイ兄、これどう? コレ」



 美波が選んだ武器を手に取ってみる。


 一般的なロングソードタイプ。品物としては悪くなく冒険者にお勧めなのは間違いないだろう。


 だが初心者が命を預けるものと考えると話は別だ。



「こっちもどうかな! すごいよ! なんか追加ダメージが発生するんだって!」



 これも手に取ってみる……雷を発生させる両手剣だ。


 確かに性能はいい、しかし――



「両方やめとけ」

「えっなんで?」



 口を尖らせる美波に俺は頭を掻いて説明する。



「まず重い。お前ダンジョン潜るの以前に剣を振ったりするのも初めてだろ」

「そりゃそうだけど……初めては誰にだってあるし、初心者って剣じゃないの?」

「それはゲームの話だぜ。リアルじゃ相手に刃のある方向ける必要があるんだぞ。それにこの重さ……お前、十キロ近いダンベルをずっと持っているのを想像してみ」

「ぐ、そう言われると……格好よく斬れる自信ないや」

「初心者用の鈍器系、メイスとかにしておけ。軽くて固いヤツ。そっちの方が振り回すだけで楽だぞ」



 上手に斬れないと手首への負担が半端ない、その点鈍器は当たればどこでも良い……初心者向けと言えるだろう。


「じゃ防具は? これなんて軽くて動きやすいよ、しかも防御フィールドを発生させる装置付き!」

「軽いのはいいが故障したら大変だぞ。慣れるまで胸部装備か厚手のマントにしておけ……あと足元だけは守れよ。犬系に足を噛まれ動けなくなって、そのままリターナー(回収業者)のお世話ってのよくあるから」

「……ふうん」

「なんだよ」

「なんかカイ兄って、やたら詳しくない? さては……」

「えっ」



 もしかして俺が結構なベテランってバレたか? 誤魔化そうと身構えると美波はあっけらかんと笑っていた。



「ダンジョン系の小説書いたことあって、その時勉強した知識?」

「あ、うんうん、そうなんだよね~」



 あぶねえ、俺がベテランってバレたら当分振り回されるところだった。


 俺は最大限、姪っ子の要望と自分の懐に相談しながら装備を整えてやった。



「ありがとうカイ兄! あ、そうだ」



 そんな美波は手を合わせると上目づかいで懇願してきた。



「今日、早速撮影したいからアシスタントしてもらえると嬉しいなあなんて」

「……今日から!?」


※次回は12/7の18:00頃に投稿します


 ブクマ・評価などをいただけますととっても嬉しいです。励みになります。


 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 


 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。



 この作品の他にも多数エッセイや



・追放されし老学園長の若返り再教育譚 ~元学園長ですが一生徒として自分が創立した魔法学園に入学します~


・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果


・「俺ごとやれ!」魔王と共に封印された騎士ですが、1000年経つ頃にはすっかり仲良くなりまして今では最高の相棒です


 という作品も投稿しております。


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