第一章 第14話:新商品の衝撃と暗雲

数日後、ルシアンたちの店で開かれた新商品の発表イベントには、多くの客が押し寄せた。ギルドの商品が市場を席巻していた中、ルシアンの店の商品は独自性で勝負していた。


「このハーブを使用したお茶は、疲労回復やリラックス効果があるだけでなく、ここでしか手に入りません。」


ルシアンが自信を持って説明すると、集まった客たちから感嘆の声が漏れた。試飲コーナーでは、香り高いお茶に舌鼓を打つ人々の姿が目立つ。


「これはすごい!こんな味は初めてだ。」

「ギルドの商品とは全然違うわね。」


客たちの反応は上々だった。口コミは瞬く間に広がり、店の評判は再び急上昇した。




その様子を、ギルド本部の一室でエドガーが静かに見守っていた。彼の表情には焦りが混じっていたが、同時に不敵な笑みを浮かべる。


「さすがだな、ルシアン…だが、この程度で勝てると思ったら大間違いだ。」


彼はギルド幹部たちを前に、新たな策を提案した。

「ルシアンたちの商品が注目されている今こそ、彼らの供給網を断つべきです。地元の農家や職人たちに圧力をかけ、取引を中止させましょう。」


幹部の一人が眉をひそめて答えた。

「だが、それはあまりにも露骨すぎる。もし問題が発覚したら、ギルド全体の信用に関わるぞ。」


エドガーは冷静に切り返した。

「ならば、取引先を買収すればいい。農家や職人たちにもっと有利な条件を提示し、彼らを引き抜くんです。」


幹部たちは渋々ながらもエドガーの提案を承認した。




その夜、ルシアンの店は通常営業を終えた後も大忙しだった。新商品の注文が殺到し、マリーアも疲労の色を隠せない様子だった。


「本当に順調にいってるけど…これが続くのかな。」

彼女は不安げに呟いた。


ルシアンは笑みを浮かべながら答えた。

「今は順調だよ。でも、敵が何もしてこないとは思ってない。エドガーが黙っているはずがないからね。」


その言葉に、マリーアの表情はさらに曇った。

「また何か仕掛けてくるの…?ルシアン、大丈夫なの?」


ルシアンは彼女の肩にそっと手を置き、優しく言った。

「心配しないで。僕は必ず道を切り開いてみせる。」


彼の自信に満ちた言葉に、マリーアは少しだけ安心したようだった。だが、その胸の奥には、言い知れぬ不安が渦巻いていた。




翌日、ルシアンの元に農家の一人から急報が届いた。

「ルシアンさん、大変です!ギルドの人間が来て、もっと高い価格で取引すると言ってきました。うちの村の何人かはもうそちらに切り替えました。」


その言葉に、ルシアンの眉がピクリと動いた。

「やっぱり動き始めたか…。他に何か聞いたことは?」


「ええ、彼らは供給網を全部ギルドにまとめるつもりらしいです。このままだと、私たちも取引を続けるのが難しくなるかもしれません。」


ルシアンはしばらく黙り込み、深く考え込んだ後、静かに口を開いた。

「ありがとう。君たちは僕にとって大切なパートナーだ。この状況を打開する方法を必ず見つける。」


彼はすぐに店に戻り、マリーアやスタッフたちを集めて状況を説明した。

「ギルドは僕たちを潰しにかかっている。でも、まだチャンスはある。新しい供給網を作るだけでなく、ギルドの弱点を突いて反撃する。」

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