過去の軌跡
爺さんの遺体が腐敗し始めた頃。
「このまま死んじゃだめだ……」
少年はただその言葉を繰り返していた。
爺さんにかけていたその言葉はやがて自分に向けての言葉へと変わっていた。
少年は爺さんの残した日記と一通りの装備を持つ。
「このまま死んじゃだめだ――」
1階へ行き、スマホを繋ぐ。
『起動しました。ようこそ』
「このまま死んじゃだめだ。」
重い扉をゆっくり開ける。
開いた先は何も変わらない砂漠がただ広がっている。
「このまま死んじゃだめだ!」
爺さんの願い。この世界でまだ生きているかもしれない人と出会う。その為に僕は世界への扉を開け、歩き始める。当てさえない途方もない旅を。
『どちらへ向かわれるますか?』
「……人のいる方へ」
『――ナビを設定しました。残り距離は3kmです。』
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