22つ目の友情

 下り坂で一歩を踏み出す度に、ランドセルの中の教科書たちや筆箱が音を立てる。足元にあった石ころが偶然靴にあたって、コンクリートの塀に当たる。ため息をひとつついて、ランドセルを背負い直してから、家まで全力疾走で坂を下った。


 「やっほ〜!友陽!」家に着いて扉を開けようとすると、その前にいた大地だいちに話しかけられた。時刻は夕方。彼の家の門限はもう過ぎているはずだ。今日学校でしたやり取りが頭をよぎり、彼に警戒の目を向ける。頭の後ろで腕を組んだ彼は、「そんなに睨むなって〜!お前が遊ぶ約束断るとか珍しいから、心配になって来てやったんじゃん!」と話す彼。その言葉に嘘はなさそうだ。申し訳なくなって「全然元気だから大丈夫だよ。」と返すと、「だろうな!公園でかわいいお姉さんとデートしてるもんな!」と笑われた。ん?お姉さん?お姉さんって・・・。

 「友陽だけずるいぞ!『青春後悔』って書いてあるTシャツを着てるあたりはちょっとセンス疑うけど、顔とか全体的な雰囲気は悪くねぇじゃん!」そう言われ、思わず目を丸くする。え?大地にも後悔ちゃんが見える?何かの冗談か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る