16つ目の友情

 公園の入口の植え込みに隠れて中の様子をうかがう。中を見渡すと、あの日彼女が乗っていたブランコが目に入った。他のブランコには人が乗っているのに、そのブランコだけはなぜか空いていた。僕には、昨日までよりも足が見える範囲が狭くなった(昨日まではショートパンツからわずかに太ももが見えていたが、今日は見えない)彼女がそこに座っていた。いつも僕に見せるような明るい表情ではなく、どこか儚さやあどけなさを感じさせる暗くて沈んだ表情で。


 「ねぇ、後悔ちゃん。」彼女の座るブランコのそばに行き、思わず声をかけた。今僕が声をかけないと、彼女がこのまま消えてしまいそうだと思ったからだ。

 「あっ、友陽。」下を向いていた彼女の瞳が僕をとらえる。久々に彼女の口から発せられた僕の名前に体が熱くなる。彼女の瞳が一瞬不安そうに揺れる。「今日、なんか早くない?なんで?」先ほどより少しだけ明るくなった表情でそう尋ねてくる彼女。「友だちみんな予定あって、遊べなくて。」元気のなさそうな彼女に気をつかってそう返すと、へぇとだけ相槌を打たれた。

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