12つ目の友情

 猫を追い払ってくれたおじさんのうちの一人に、「人気のない夕方の公園で何をやっているんだ!」と怒鳴られてしまった。

 大人たちが全員帰ったことを確認してすべり台に近づく。助けが来た瞬間、ネットの周りの光が消え、すべり台の上の後悔ちゃんが膝から崩れ落ちていくのが見えた。彼女の周りの怪しい光はなくなっていて、肩を上下させて呼吸をしていた。おそらく、ネットを動かすのに何か不思議な力を使ったのだろう。本当はすぐにでもりたかったが、彼女は幽霊なので見えない人たちに怪しまれてしまうかと思ってやめた。

 「後悔ちゃん、大丈夫?」崩れ落ちた体勢のままの彼女を心配してそう声をかける。運動をした後のように呼吸が乱れていて、背中をさすろうと彼女の背中に手を伸ばした。彼女が幽霊であることを忘れて・・・。


 「わっ!」伸ばした手が後悔ちゃんにれることはなく。その勢いのまま前に倒れてしまった。さいわい、手をつくことができてケガはしなかった。しかし、一瞬、後悔ちゃんの中に入ったような、自分が彼女より優位に立ったような、不思議な感覚に包まれた。初めての経験に怖くなって慌てて立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る