10つ目の友情

 「おすすめしないだけで、ダメなわけではないんでしょ?」前もって考えておいた言葉を彼女に返す。しばらく悩む素振りを見せた後、「後悔するよ。」とだけ囁かれた。

 「僕が後悔ちゃんと仲良くしたいだけだから。」と言うと、「仲良くって、わたし、幽霊だよ?キミにさわれないんだよ?」と控えめに笑われた。「別に触れなくてもこうやってお話はできるじゃん?」彼女にそう返すと「変わってるね、少年。」と曖昧に笑われた。


 その後も学校のことや友だちのこと、家族のことなどの何気ないことを彼女と話した。彼女は僕の話に楽しそうに相づちを打ってくれた。けれど、彼女自身のことはほとんど話してくれなかった。彼女の小学生時代のエピソードは何も得られなかった。

 

 「時間、大丈夫?」後悔ちゃんとの会話を楽しんでいると、彼女がそう言った。おそらく、昨日お父さんに怒られたことを話したから気にかけてくれたのだろう。「あっ、そろそろヤバいかも。」そう返すと「そっか、もうバイバイか。」と彼女が寂しそうに呟いた。

 「また明日も来るよ!」彼女にそう返すと「ほんと?嬉しい!待ってるね!」と表情がぱっと明るくなった。公園の出口まで見送ってくれた彼女に手を振って帰路につく。

 「後悔ちゃんって僕が学校に行ってる間、何してるのかな?」帰り道、そんな疑問を口にしてみる。もちろん答えてくれる人はいなくて、独り言が空中に消えていっただけだった。

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