出会って2日目

9つ目の友情

 友だちとの遊びをいつもより少し早めに切り上げて走って公園へと向かう。昨日は帰宅が遅くなり、お父さんに叱られてしまったので今日は時間に気を付けよう。そう思いながら公園に入ると、「おっ、少年じゃん!」と頭上から声が降ってきた。

 声のする方を見上げると、ジャングルジムのてっぺんに座った後悔ちゃんと目が合う。僕と目を合わせた彼女はそのまま立ち上がり、ジャングルジムから飛び降りた。思わず目を瞑るが、落下音も人が降りてきた時の振動も全くなかった。

 「少年、驚きすぎだって~!」そう言って楽しそうに笑う彼女に「そりゃびっくりしますって!死ぬかもしれないんですよ!」と返すと、「わたし、既に死んでるんだけどなぁ!」と笑われた。そうだ。彼女は幽霊なのだ。


 「少年、学校はどうよ?」彼女に促されるままジャングルジムに背中を預けると彼女が口を開いた。「楽しいよ。」と返すと「そっか、よかった。」と微笑まれる。その後はしばらく沈黙が流れた。

 「後悔ちゃんはどんな小学生だったの?」沈黙に耐えきれず、頭の上で手を組んで空を見上げる彼女にそう質問した。彼女はその体勢のまま「うーん・・・。」と少し悩んでから「普通の小学生だったよ。」とだけ返ってきた。「普通ってどんなだよ!」思わず彼女にツッコミを入れると、「普通は普通だよ。」と答えにならない答えが返ってきた。「ほら、色々あるじゃん!勉強ができたとか運動ができたとか、友だちが多かったとかさ。」そう言って彼女を見上げると、視線に気づいた彼女がこちらを向く。

 「その話、面白くないよ。」ポツリと呟く彼女に「昨日も言ったけど、面白い話を期待してるわけじゃないよ。」と言うと、「幽霊に干渉するのはおすすめしないよ。」と昨日と同じ言葉が返ってきた。

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