7つ目の友情
「自殺だよ。」
後悔ちゃんのその一言で周囲の空気がぐっと重くなる。先ほどまで聞こえていた風のざわめきや木の葉が擦れる音すらも聞こえなくなる。
「あっえっと。」思いがけない返答に言葉を詰まらせる。まだ10年しか生きていない僕にその単語は重すぎる。初めての経験になんと返すべきだろうかと悩んでいると、頭上からあははっ!と笑い声が聞こえてから、「返す言葉に困ってるじゃん!だから人の死因なんて軽い気持ちで聞くべきじゃないんだぞ!」という言葉が降ってきた。顔をあげると笑顔の彼女。その表情は年下をからかっているようにも自分を嘲笑っているようにも見えた。
「自ら死を選ぶってことは、相当辛いことがあったってこと?」遠くを眺めて黙ってしまった彼女にそう問いかける。「あっ、えっ?」いきなり質問されたことに驚いたのか、この話題が続くと思っていなかったのか、間抜けな声を出してこちらを見る彼女。
「話聞くくらいならできるよ。」と彼女を見上げると、「面白い話じゃないよ。」と口ごもる。「面白い話を期待して聞いてるわけじゃないよ。」と言うと、彼女は僕の方を見て一瞬目を潤ませた。しかし、すぐに朗らかな表情に戻って「幽霊に干渉するの、あんまりおすすめしないよ。」と独り言のように呟いた。
「どうして?」僕がそう聞き返すと数回瞬きをして大きく息を吐いてから口を開いた。
「もし、もしもだよ。わたしがキミに取り憑いて悪さをするような、悪い霊だったらどうするの?」「え!?」今度は僕が間抜けな声を出す番だった。
「心を許すと簡単に取り憑かれちゃうよ?」そう話す彼女に「後悔ちゃんは悪い霊じゃないでしょ?それに、仮に後悔ちゃんが人に取り憑いたとして、悪いことをするような人には見えないけどな。」と返すと、彼女は「わたし、幽霊だけどな。」と呟いた。
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