4つ目の友情

 「わたしね、できなかったんだ。」声のトーンを落としてそう呟いた彼女。「したくなかったわけじゃないんだよ。」おもむろに足を組んで(やっぱり足首は透けている)右手を頬に持っていく彼女。ポーズは大人っぽいが僅かに見える手首の丸さや手が沈む程フニフニな頬から子どもっぽさが感じられる。思わずその頬に手を伸ばして触れようとしたが、僕の手は彼女の頬をすり抜けた。

 え?と一瞬驚いたが、彼女が幽霊であることを思い出して”漫画とかアニメの幽霊もそうじゃん”と一人で納得してうつむいた。僕の表情を見て何かを察したらしいお姉さんは「そうだよ少年、お姉さんだから触れないんだよ。」と言って、姿勢を低くして僕の顔を覗き込んできた。「だから、少年に干渉したりしないから安心して?」そう言って微笑む彼女。その後、おもむろに立ち上がって伸びをした。


 「少年ってさ、今いくつ?」伸びをした体勢のままこちらを振り返る彼女。前髪がさらりと揺れる。「あっ、小4、10歳です。」突然彼女が大人っぽく見えて、敬語でそう返すと「急に敬語使うのやめろよ~!」と無邪気に笑った。それから、ベンチに座り直して足を組んで「10歳ってことは8コ下か~。」とまた笑う。

 「えっ!?後悔ちゃん18!?」まさか成人しているとは思わず大きな声をあげて立ち上がる。「18ってことは大人ってこと!?」ベンチに座っている彼女の方を振り返ってそう言うと「そうだよ~。わたし大人。」と気の抜けた返事が返ってきた。僕は大人のお姉さんにタメ口をきいてしまったのかと申し訳なく思っていると、「そんな暗い顔すんなって!死ぬ前の話だから!死んでからどれくらい経ったのか分かってないから!だから、大丈夫だよ~!」と慌てて励ましてくれる彼女。そうかと納得しかけていたが僕はあることに気づいた。

 「待って!?ってことは18よりもっと上の可能性あるじゃん!?何も大丈夫じゃないよ?」とうろたえると「確かに、一理ある。」といたずらっぽく笑った。

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