コンビニでハードモード

 放課後、淡海マヒロは学校帰りにコンビニに寄っていた。

 今日の目的は雑誌と肉まん。平穏そのもののひととき……のはずだった。


「動くな!金を出せ!」


 突然、店内に怒号が響く。振り返ると、マスク姿の男が包丁を振り回し、カウンター越しにレジの店員を脅している。


――その様子を、別のクラスの女子、芹沢せりざわサクラが店の外から目撃していた。


 「えっ、コンビニ強盗?」


 怖くて中には入れないものの、ケータイで直ぐに警察に通報した。窓越しに中を覗き込むと、知っている制服の男子が目に入った。


 「淡海君……?」


 クラスは違うが、体育祭で目立っていた彼の姿を覚えていた。


 一方、店内。


 「おい、そこのガキ!」


 男がマヒロを指差す。


 「お前も動くな!」


 「いや、動いてねえっす――」


 マヒロが否定するも、男は焦ったのか、近くの棚から商品を乱暴に引っ張る。


 ガシャン!


 商品が棚から雪崩のように崩れ落ち、その一部がマヒロの腕に当たった。


「……。」


 無意識に商品を払いのけるマヒロ。だが、軽く触れたはずの棚が――


 バキィッ!


 盛大な音を立てて壊れた。


「な、なんだ!?」


 男も、店員も、サクラも固まる。


「あーあ、またやっちまった……」


 呆れたように棚を見下ろすマヒロ。


 怯えた男は手にしていた包丁を握り直し、何故かマヒロに突進してきた。


「お、お前はなんなんだ――!」


 その瞬間、マヒロは反射的に手を伸ばして受け止めた――というか、触れた瞬間に包丁の刃がバキバキに折れた。


「え?」


 男の手元から落ちた包丁の刃を見て、その場にいた全員が呆然としていた。


「お前、なんなの……?」


「だからただの高校生なんだって、勘弁してよホント」


 男は諦めて後ずさるも、最後はマヒロが軽く肩を掴んでその場に動けなくさせた。


――数分後。警察が駆けつけ、男は無事逮捕。


「助かりました!んですけど、キミ絶対普通じゃないよね」


 店員から感謝と疑念の目を向けられるマヒロは、とりあえず肉まんをタダで貰えた。けど、暫くコンビニには来たくない、マジで。


 そんな様子を外から見ていたサクラは、ただ呆然としていた。


「淡海君……普通じゃないよね……?」


 彼はなんか知らないけど明らかに異様な力を持っている。その事実に、サクラはなぜか胸がざわつくのを感じていた。

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俺が強すぎて人生ハードモード 雨宮悠理 @YuriAmemiya

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