俺が強すぎて人生ハードモード

雨宮悠理

強すぎるのも困りもの

 淡海おうみマヒロは、普通になりたかった。ただそれだけ。

だが現実は違う。マヒロは生まれつき「最強すぎる力」を持っていた。物を壊し、人を傷つけ、日常生活すらまともに送れない。


 たとえば、小学生時代のバレンタインデー。


「マヒロ君、これ受け取って!」


 渡された手作りチョコを受け取った瞬間、チョコは粉々に砕け散り、渡した女の子は泣き出してしまった。嗚呼、好きだったのに。


 中学では、イキりヤンキーの矢口に軽く肩を押されただけで反射的に力が入ってしまい、彼の腕を「粉砕骨折」させたこともある。それ以来、矢口とその取り巻きは二度と近づいてこなかった。


 ――あれから数年。マヒロは高校生になったが、力の制御は多少はマシになった。多少は。


「頼む、今日は何も起きないでくれ……」


 机に突っ伏しながら祈る日々が、マヒロの平穏を守る唯一の手段だった。

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