第2話 イカれた部員(メンバー)を紹介するぜ!!
「部員が元々2人居たんだけど、辞めちゃったんだ。今は自分を含めて部員は3人」
部室棟へと続く廊下を歩きながら、
「部の規定は5名以上だったよな。部員が辞めたせいで欠員の補充が必要になったわけか」
「うん、校則で兼部は認められてないから部員探しが大変で……」
「それで帰宅部でかつ友人の俺をターゲットに選んだというわけか」
「女の涙は武器だからね!! それに、航季くんのお人好しっぷりなら……痛ぁっ!!」
とりあえず、ムカついたので桃春にデコピンを食らわせてやった。
人助けをするのは構わないけど、その性格を利用しようとしているのは駄目だろうが。
そもそも、女の涙は武器というが、あの泣き崩れっぷりは兵器の類である。
逃亡すれば泣きつかれ、参加すれば引き込まれる。実質、詰みである。
そんな桃春の奇策に、ほんのりとした苛立ちを覚えていると、部室棟へと到着する。
廊下には運動部、文化部、その他委員会が利用する部屋が立ち並ぶ。
そこの1つに『創作部』と記された室名ネームプレートが目に入る。
どうやら、部室はあそこらしい。
さあ、部屋へ入ろうか……と、したいが、とある問題が発生した。
部屋の扉の前。一人の女生徒がうつ伏せでぶっ倒れていたのだ。
「大丈夫ですかぁ!?」
人が倒れていたら、まずは意識確認。これ基本。
俺はすかさず女生徒へと駆け寄り状態を確認する。
身長は140cmほどの非常に小柄な体躯。
髪は薄灰色な芦毛。
ひとまず、体制を安定させようと仰向けにさせると、人形みたいな綺麗な顔立ちが現れる。
眉毛は長く、閉じた瞼のおかげでより強調されている。
胸部に関しては……身長にしてはアンバランスなデカい乳。うお、デッカ。
って、何を邪な目で見ている。死んでないよな?
女生徒の手に触れて、脈を確認する。肉体は温かいし、脈もある。
どうやら気絶をしているみたいだ。
「よかった……」
ホッと小さな息を吐き出すと、俺は彼女の頬を優しく叩いて意識が回復しないか試みる。
「大丈夫ですか? 意識はありますか?」
すると、答えるように女生徒の瞼がピクリと動き、ゆっくりと瞳が開かれていく。
「んん~?」
「目が覚めましたか? 体に痛みや異常はありませんか?」
俺が状態確認の問いかけを行うと、彼女はゆっくりと上半身を起き上がらせて、首を左右に動かしながら周囲の状況をキョロキョロと確認する。
そして、俺と目が合うと、ペコリとお辞儀をしてくれる。
「あけましておめでとうございます」
「大晦日から寝てたのかな!?」
どうやら、寝ぼけているらしい。
どうしたものか……っと、考えていると、後ろから桃春が軽い笑い声をあげながら話しかけてくる。
「も~、
「この娘、気絶の常習犯なの!?」
「常習犯もなにも、我が創作部に所属する部員の一人、
「そ、そっすか」
もはやツッコミが追いつかねぇ。
あまりの衝撃に呆けていると、桃春は五月晴さんを俵担ぎして部室へと入っていく。ずいぶんと手慣れているので、先程の話は事実らしい。
「航季くん、遠慮しないで入っていいよ~」
と、桃春の招き入れる声が部室から聞こえてくるが、今すぐ回れ右してGo Homeしたい。
何となく部員が集まらない理由が分かってきたからだ。
もう一人の部員は一体、どんな奴なんだよ。
「どうされたのですか?」
そんな部室前で躊躇する俺の耳へ届いたのは透き通るような可憐な声。
すぐさま声のした方へと視線を移すと、そこに立っていたのは黒髪ロングの乙女であった。
身長は150~155cmくらいだろうか。
背筋は針が通ったみたいに真っ直ぐで、腰まで伸びる混ざりけのないストレートロングヘアと合わさり凛とした佇まいを形成している。
目は垂れており穏やかな雰囲気を作り出し、くりくりとした大きな瞳との組合せが絶妙な可愛さと奥ゆかしさを作り出している。
これに加えて泣きぼくろがついているのは反則級と言わざるおえない。
そんな大和撫子な雰囲気には似つかわしくないお胸のサイズ。先程の冬華さんほどではないが、Dくらいはあるだろう。そこに関しては慎ましやかではないらしい。
圧倒的なお嬢様オーラっぷりに思わず面食らい、俺は生唾を飲み込んでしまう。
「あの……あまり見つめられると恥ずかしいのですが」
「あ!! す、すみません。ちょっと、桃春……
「まあ、そうなのですね!! ふふ、でしたらご遠慮なく。私も創作部員ですので~」
ぱあっと彼女は御仏のような笑顔を作り、両手を合わせる所作をみせる。う、美しい……。
なんとまあ、俺は単純な男なのでしょうか。先程のまでの不安は光のごとく瞬時に消え去り、この美女と一緒の部活なら悪くないなと、手のひら返しをする始末。
そのまま、彼女の後に続き、躊躇なく部室へと踏み入れると、桃春が両手を軽く振りながら美女へと挨拶をする。
ちなみに、五月晴さんはソファで横になりグロッキー状態である。
「あ、
「こんにちは、桃春さん。見学者さんがいらしたのですが、お知り合いですか?」
「うん、中学からの友達なんだ。見学に来てくれて良かったよ~」
にこやかに答える桃春だが、お前、さっきまで女子を捨てたような大号泣をしていたのを忘れてないよな? 俺は覚えているぞ?
だがまあ、ここで下手に指摘しても美女に嫌われてしまうかもしれない。
俺は怒りの感情をぐっと抑え込む。
「それでは、見学者の……」
「
「そうですか~雨河さん。桃春さんのお友達ということは、私と同学年ですね~。私は
そして霜月さんがお辞儀をすると、きめ細やかな黒髪が重力に従い垂れる。
何気ない所作1つ1つで相手をドキリとさせ、心臓を高鳴ならせる人もそうそう居ないだろう。
これは、とんでもない人とお知り合いになれたのでは?
それほどの昂ぶりを覚えるくらいに彼女は、とてつもない美人さんなのである。
「それでは、雨河さんを歓迎しないとですね。お飲み物を淹れてきますので、緑茶と紅茶、どちらがよろしいでしょうか?」
「ウッス、なんでもいけます!!」
「では、クッキーを持ってきましたので紅茶を淹れますね~」
霜月さんはそっと微笑むと、給湯室へと向かうのだろうか、長い黒髪を翻しながら部室入口へと向かおうとする。
が……その瞬間、霜月さんが足をもつらせて転びそうになる。
すかさず俺は彼女の体を支えて、転倒を見事に阻止してみせた。
「霜月さん、大丈夫ですか?」
「き……」
「き?」
「き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛! ! ! ! 」
一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。
室内どころか、校内全体に轟く叫び声。
その破壊力抜群な轟音は屈強な男子ではなく、針金細工のように細い霜月さんの口から溢れ出ていた。
間近で絶叫を聞いた俺は鼓膜が麻痺したのか、キーンっという耳鳴りが止まらない。
うう、なんなんだ一体?
困惑するのも束の間、パワーヴォイスを響かせた霜月さんの肉体から力が抜ける。気絶したみたいだ。
「あ~、えっと??」
事態が飲み込めず、助け舟を求めるように桃春へと視線を送る。
「あはは~、個性豊かでしょ?」
「多様性が大渋滞を起こしているんですけどぉ!?」
とりあえず、俺は気絶した霜月さんを保健室へと運び込むのであった。
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