6日目:げぇいむ。

どぉおおおおおん…ふぉあああああん…


…うるさいなぁ。多分。きっとうるさいんだろうなぁ。

ぼくは、イヤホンをして音楽を聞きながら英語の長文を読んでいた。

一段落着いたので、イヤホンを外し、耳と目を休めようと顔を上げたらやはりこの顔。


白髪ロングヘアーのナナたんが、体を六十度ぐらいに捻じ曲げていた。

車運転するときに、演技とかで体傾けたりとかするやーつ。あんな感じになってた。

せっかくきれいにおめかし(これでも普段着なんだろうけど。今までの傾向から見て。)して着飾っているピンクのフリフリした服がしわくちゃになってそう。

こういう服ってショッピングモールとかに売ってないでしょ。結構貴重なもんなのに、グイグイ生地が引っ張られてる。


ムスッとした顔でナナたんが見つめるのは、携帯ゲーム機。

家電量販店で一度は見たことある、瀑売れハードウェアのアレだ。電子に疎いぼくでも、これぐらいは知っている。

電子辞書の電池とかを買いに行ったり、本屋へ参考書を買いに行ったりするときにに、よく見る形と、なんか壮大なBGM。

ずら〜っと並んでるんだよな。ああいうの。ちょっと芸術を感じる。BGMも一ヶ月に一回は聞くから、自然と覚えちゃう。


こころなしか、今日のナナたんは不機嫌そうだ。

傍らでナゲットをかじる口がすんごい早いの。

モ゛ッモ゛ッモ゛ッモ゛ッモ゛ッモ゛ッモ゛ッモ゛!!!

って感じ。食うスピードが異次元すぎるよ。一体何が有った??



…ってあ〜。何かこのBGM聞いたことある。カチカチカチカチッ!!!っと忙しない連打音に混じって聞こえる音楽に耳を傾ける。

友達に気になって話題にしたら、『今回の◯ロムは本気出しすぎてエグいんよ!!』とか言って来てそこからワケのわからない愚痴トークが始まったあのゲームだ。

降星のどうたらとかうんたらの貴公子だとか…

いやそれ誰?ってなってた。未プレイ勢に優しくない友達である。


なにせひたすら死にまくるゲームだからな。

自分ではないとはいえ、ボスも倒せないし自分は死んで最初からだし。

理不尽な難易度に憤るけど、結局回数を重ねていくから。慣れていくとだんだん敵の所為にできなくなってきて。

一人プレイだから、他人の過失にできなくてやり場のない怒りに囚われる。

でも、ソレを克服したときにいっちゃん面白くなるんだからなぁこれが。


…あ。今の友達談ね?

ぼくはそんなのまーったく知らんぜよ。


ん?

あれ、どうしたんだろ。

ナナたんの肩が震えてる…


あれ?もしかして…結構不味い怒り方なのではッ?


「クソが。」


ドゴォンッ!!!!


ウチのお店は、ワークライフバランスを重視してるお店だ。定休日はちゃんと取るし、閉店時間も八時ぐらいだ。24時間営業?なにそれ美味しくない。

その時は閉店間際で、暗い夜の中明かりを灯すこの店内には、お客さんというお客さんは殆ど帰っていた頃だった。ぼく以外は。


だから、彼女がぶん殴った机がどんな悲惨なことになったのかは、だ〜れも見ていなかった。ぼく以外は。一応擁護しておくと、粉々レベルで砕け散ったこの机はちょっと古めの机で、そろそろ買い替えようかという話を家族でしていたモノであった。そこは明らかにしておこう。


にしたってアホ力すぎるわ。

う〜ん現場目撃の際の感想を言えと誰かに問われたならば、ぼくはこう答えるだろう。


「あぁ…二万が飛んだ…」

「…( •̀ω•́ ; ) 」


空気は地獄でした。

そそくさと帰りました。

ぼくには無理ですあんな冷え切った空気で何事もなかったかのようにカバンに教材を入れるのはすいませんごめんなさい。


最後にぼくが見たのは、表情筋を珍しく動かしながらアセアセしてるナナたんの困り顔だった。

…この人に萌え?を感じるってほんとか?なぁ友達君さんよぉ。







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