五日目:休むぞ。
休むぞ。
今日はお休みの日。お休みって言ったらお休みなのだ。
勿論、お休みだからいつものファストフードの店に行って、いつもの席でいつものように勉強しない。
ここ最近、なんだかんだ毎日遭遇してたナナたん(仮称→本物に昨日変更された。)とも、今日は会うことはないと思う。
新キャラ枠のお汁粉ちゃんも、多分一日中見ることはないだろう。来てるか知らないけど。
休みってそういうもんだ。通常の業務や授業なんかが、休業される日だ。Wik◯pediaだってそう書いてあるもん。うん。
だから、今日は家でぐうたらするぞ〜。
…とまぁ一般の学生達はきっとそうなんだろうけどね。
「ナゲット2つ。」
「あ!それと、期間限定のナッツミルクティーも一つお願いします!」
カウンターの前に立つは、二人の姿。
一人は、いつものナナたん。今日は目に優しいベージュの服を着ている。メガネもつけてる。猫耳はない。
もう一人は、声を聞いた感じあのお汁粉ちゃんだ。声調よろしく、朗らかそうな外見の人だ。ナナたんとは対照的な髪の短さ。昨日と違って髪の毛が明るい茶色をしている。
カウンターの向こう側でその二人を迎え撃つは、そう。ぼくこと、秋真である。
今日は制服ではなく、ちゃんと従業員が着るエプロンみたいなやつを着て、姿勢良くプロ精神でお客様をお迎えしている。笑顔かどうかは置いといて。
二人の注文を受けたぼくは静かに口を開く。
「店内で?」
「はい!」
「ご注文は、ナゲット2つ。トリプルナッツミルクティーでよろしかったでしょうか。」
「ん。」
「お支払いは。」
「キャッシュレスで。」
「タッチをお願いします。」
ピーッ。
「レシートです。受け取り口でお待ち下さい。」
…ふぅ。今日はいつもと違って緊張したなぁ。
見知った人なんて少ないので、一方的に知っている人間とはいえこの姿を見せる機会が初なわけだ。無意識に身構えちゃうんだろうな。
ぼくの安堵のため息を尻目に、愉快な二人組はレジ横にある受け取り口へ向かって行く。
あの二人席で勉強しない『休日』の間、ぼくはここで働いているのだ。
親が経営するファストフード店『
しかも、ここが本店。支店もあるらしいけど、有って十店舗ぐらいかなぁ。
ん?有名チェーンっていつか言ったじゃんって?
…ぼくが家に帰るときはいつも目にするし。名の知れた人気店舗でしょうが。
まぁ、実際のところはそこそこって感じ。街の人々には割と知られている。
収益もちゃんと安定して黒字らしい(母親調べ)。
っつー理由で、ぼくが普段何も買わずにこの店の二人座席を占有して勉強できてるってわけ。
そもそも、ぼくがこの店へ来だしたのは、ちょっと前までは自習の気分転換のつもりだったんだよ。でもなんだか雰囲気が良くて気がつけば毎日ここにいる羽目に。
ちゃんと商品は買ってたよ。従業員になる前は。
そんなぼくを見張ってた父上母上が、
『ここに来て勉強するだけなのも勿体ない!』
っつって、両親がここで働くことを勧めてくれたのだ。
勿論ちゃんとバイト代も弾むとか言って。何なら正社員の給料レベルまで行ったっていいとかも言ってた。
流石に本当の正社員の人に申し訳ないから、学生のバイト代ぐらいのお給料になったけど。
今のところ、ぼくは勉学優先ってことで週一だけのシフト。
ぼくはもっと働きたいって言ったんだけど、聞いてくれなかったんだよね。むぅ。妙な所で頑固な両親だ。
そんなこんなで半年経って、今では知る人ぞ知る名バイト店員に…なってるはず。
今日も今日とて、最近仲良くなった同僚と話す時間があるかないか絶妙なぐらいに忙しい。
はいはい。いらっしゃいませー。
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