第4話 プレゼント
結局その後、父が家に帰ってくることは無かった。
私とお母さんは食卓につく。
するとお母さんが
「パパったら〜。本当にダメな人ね。今日は
大事な一人娘の誕生日なのに、どこで何をしてるのかしら。」
と、首を傾げながら言う。
「毎年のことだから、もう期待なんかしてないよ。」
私はそう言って溜め息をついた。
期待なんか鼻からしていない。
毎年、毎年、期待してても無駄だったから、、
でも今年の誕生日は成人を迎える日。
例年通りの普通の誕生日なんかじゃない。
人生で一回しかない。
大人として括られる日。
未成年の括りでは無く、大人になれる日なんだよ。
何もわかってない。この誕生日の大切さとか、、
そもそも、誕生日は人の一生において最初の記念日だから、家族や友人が集まるんだよ。
なのに、なんで私は人生で一回も家族一丸となって誕生日を迎えられないのだろう。
父の行動に嫌気が差してしまって、思わず
「父なんていない方がマシ。毎年、父の帰りを待ってるのも馬鹿馬鹿しいし。誕生日を一緒に祝えないならいてもいなくても変わらない。」
と言ってしまった。
「まあまあ。そんなこと言わないであげて。あの人はあの人なりに大変なのよ。」
あの人は私の誕生日より大事な用事でもあるわけ。
その用事って何。意味わかんないよ。
理解が出来なさすぎて、空気が重くなる。
「気を取り直して、食べましょ!今日はかれんの大好物の寿司なんだから!
いただきます!」
と、空気を変えるように明るい感じで言ってきた。
「いただきます。」
と呟いて、寿司を口に運び始めた。
私のお母さんはいつも底抜けで明るい。
そして私の父は正反対で暗い。口数も少なく、なんでお母さんは父みたいな人と結婚したんだろう。理解し難い。私ならもっと家庭に協力的な人と結婚する。
「あと、これは誕生日プレゼントね。
改めて、誕生日おめでとう!
そして、私たち夫婦の元へ生まれてきてくれてありがとう。
かれんのおかげで私は毎日が幸せだわ。」
そう言って、細長い箱を私に渡してきた。
「ありがとう、、、」
こんな高そうな箱、初めて見た。
「開けてみてよ!」
そっと、箱のリボンを外す。
そして、ゆっくり箱の蓋を開けた。
「、、!」
そこには綺麗な銀色のハートリングのネックレスが入ってた。
「こんな綺麗なネックレス私なんかがもらっていいの。」
「いいに決まってるでしょ!娘の成人になる誕生日だったから、奮発しちゃった」
と、ニコニコしながら言ってきた。
「可愛い、嬉しい。」
父のことがどうでもよくなるくらい、心の底から嬉しかった。
「このネックレスにあるおまじないをかけたのよ。だから肌身離さず持っててね。」
そう言いながら寿司を頬張るお母さん。
「わかった。おまじないってなんのおまじない?」
「かれんが変な人に取り憑かれないおまじない」
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