第5話 父の行方
食事が終盤を迎え、そろそろ時計の短針がちょうど9時に差し掛かろうとしていた。
「やっぱり、父って私のこと好きじゃないのかな」
思わず、口に出してしまった。
お母さんは困った表情で、
「そんなことないと思うわ。だって、たった一人の娘なんですもの」
と、そう言う。
「信じられないよ。なにもかも。
18歳の誕生日を祝えない父親がどこにいるんだよ。」
お母さんについ当たってしまった。
毎年、この件について思っていた感情がヒシヒシと蘇ってくる。それに、イライラが積もる。
「逆にお母さんは、お父さんが今どこで何してるのか把握してるの?」
「、、、」
黙り込むお母さん
「ほら、わかんないじゃん。」
何も知らないお母さんは何も悪くないのに強く当たりそうになる。
こうなってしまうのも、本当に最悪な父のせいだ。
ずっと俯いてたお母さんが重い口を開いたように
「白龍山。あの人は白龍山にいるわ。」
と言った。
「山?なんでそんなとこに」
「事情はよく知らない。けど、毎年あの人はよくそこに行くのよ。」
久しぶりに暗い表情で喋るお母さんを見た。
この感覚が不思議だった。
これ以上、悟ってはいけないような知ってはいけないようなものを感じる。
重たい空気にしたかったわけじゃないけど、なぜかどんよりした空気になってしまった。
それでも、私は
「私今からそこに行く。いつ帰ってくるかわかんない人は待ち続けるのはうんざり。」
と、お母さんに言い放つ。
「辺りも暗いし、山なんて危ないわ。
今日はやめておきましょう。お願い」
確かに危険なのは馬鹿でも分かる。
夜道は暗いし、危ない人もいるかもしれない。
でも、わたしは居ても立っても居られないの
私は父に会って、話さなきゃいけない話が沢山ある。それに長い時間かけてなんて待ってられない。
だからこそ、私は行きたい。父の所に
「絶対だめよ、お願いだから
行ったら怒るからね。もう二度とあの人の場所教えてあげないよ。」
と懇願するお母さん
「ごめん、行くね。」
そう言って、気づいたら私は家を飛び出していた。
何日も帰ってくるかわかんない父を待ち続けることなんて今の私にはできない。
無事に帰ってくるから
許してお母さん
明日、死んだはずの君に会いに行こう 奏かなで @yk7ll
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