第二怪:あたし、メリー。あたしは今、屋上三人デート中なの。

 昼休みの屋上、メリーは潤に泣きじゃくりながら、抱きつき、彼は彼女の頭を撫で、慰めた。

「うう、ごめんなさい。ごめんなさい。私、もう潤の友達に迷惑は掛けないから。」

「よし、分かればよろしい。流石に授業中に泣き崩れ続けたから、一か月に撫でる事やハグする事を禁止にする事を取り止めたが、俺もまだまだ甘いな。」

「羊神君、凄いよ。あの、メリーさんと恋人だなんて。やっぱり、メリーさんは実在したんだ。」

 理夢はメリーを従える潤に感心したが、その本人は苦笑いした。

「まぁ、恥ずかしい話だが、骨董屋で彼女を見つけて、一目惚れしてな。親に頼んで、買ってもらったんだ。」

「それで私が生きているって、バレて仲良くなったのよ! これは運命の出会いなのよ!」

「まぁ、その後、小中でも、ベタベタとくっ付かれたせいで、男子から嫉妬されて、女子から敬遠されたけどな。」

 潤が何処か遠い所を見て、溜息を吐いたら、メリーは頬を膨らませ、顔を彼の頬にくっ付く。

「いいじゃん、いいじゃん。友達も、親友も、恋人も、メリーだけでいいじゃん。あっ、理夢ちゃんは特別に許してあげるからね。」

「あ、ありがとう…メリーさんの都市伝説って、電話で有名だけど、高校までずっと一緒なら電話の必要はないんじゃ?」

「ああ、私の噂なんて、尾鰭が付いて、勝手に歩いたようなものだよ! 原点である私と潤の恋の人生ラブストーリーこそ、真実なのよ!」

「だからって、毎日何年も付きっきりだったせいで、青春の大半が甘ったるくなったんだよ!

運動会では二人三脚やフォークダンスのメンバー決めが大変だったし、遠足ではクラスのみんなから外された俺たちだけで危ない所連れて行かれるし…」

「私との思い出に青春なんて必要ないよ! ほら、この屋上三人デートで私達の新しい恋の1ページを飾ろうよ!」

「あのなぁ…」

「えっ、デート!? 私も、羊神君はこんなぼっちの気味悪い私を唯一、気に掛けてくれるから、嬉しくて、友達になって、しかも、私一人しか居ないオカルト部に入ってくれて、感謝してるけど…その…私なんかで良ければ…」

 潤にベタベタと愛するメリーを傍に理夢はもじもじと顔を俯き、頬を赤らめた。

 メリーはそんな彼女に気付き、見かねて、彼女の前に顔を乗り出した。

「ねぇ、オカルト部ってどんな所? 私達の憩いの場になれる?」

「あ、うう、ええと、私所蔵のオカルト系の漫画やDVDを本棚にびっしりと置いてあるし、中古で買ったテレビや冷蔵庫に扇風機、電気ストーブもあるから、夏でも冬でも何とか…」

「じゃあ、私もオカルト部に入る! 潤とのイチャイチャ、私達で独占しちゃおう!」

「えぇ!? いっ、良いんですか!?」

「珍しいな、メリー。お前が俺以外の人と仲良くするなんて。」

「包容力と理解力のある女性は恋が成功するって、最近のテレビ番組で聞いたからよ。恋する乙女は成長するのよ、えっへん!」

「ああ、そうですかい。スゴイナー、エライナー、サスガ、オレノコイビトダナァ…」

「ちょっと、潤!? 何で棒読みなの!? もっと感情込めて、感動してよぉ!」

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