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 『まぁ、全部飼いたいと思ってるチワワの話なんですけどね』

 『はぁ~、話し始めた瞬間やばいと思ってめっちゃ焦ったやんけ』

 『途中からノリノリだったじゃないですか』

 『そりゃあこんなおもろい話、聞けるだけ聞いとくやろ』

 『ふふ、ひどいなぁ』



 僕の勘違いだったら、どれほど良かっただろう。

 ぽやぽやと笑う律の目の奥が本気だったことに気がついたひとは、この世界に何人いるだろうか。

 

 僕以外、誰も気が付きませんように。そんなことを願いながら、番組の終わりに律が新曲の宣伝を行うのを見届けた。


 テレビを消して、ベッドに倒れ込む。

 心臓が煩くてたまらない。頬は熱を持って、冷めそうにない。



 「りつのばか」



 律に対して、こんなことを思うのは初めてだ。

 だけど、今日だけは言わせてほしい。


 これまでノースキャンダルでやってきたのに、僕なんかにかまけて炎上でもしたらどうするんだ。

 

 律の負担になりたくない。

 うぅ……と唸りながら手で顔を覆った。


 すると、スマホが音を立てて震え出した。どこに置いたっけと片手でベッドを探り、見つけ出す。


 こんな時間に誰だ。

 画面に映る名前を見て、一気に酔いが醒めた。


 ――神さま。


 律から電話がかかってくるのは初めて。

 どうしよう、今出なかったら終わりにできたりしないかな。


 そうやって悩んでいるうちに着信は切れてしまう。

 ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、再び手の中で音を立て始めた。


 もしかして、この人、僕が電話に出るまで掛け続けてくるつもりじゃないだろうか。


 なんとなくそんな気がして、逃げることは早々に観念してしまう。震える指で電話に出れば、さっきまでテレビで聞いていた声が直接耳に届く。



 『紡、急にごめんね。今忙しかった?』

 「いえ……」

 『その反応、やっぱり観てた?』

 「……チワワのこと?」



 よそよそしい声色で観ていたことがバレたらしい。それでも、話にでてきたのは僕じゃないからとしらばっくれようとすると、律は微かに笑った。

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