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 「やば、律じゃん」

 「かっこいいよね、顔面偏差値高すぎ」



 スマートフォンを取り出して律のポスターを写真に収める僕の後ろを、そんな会話をしながら二人組の女子高生が通り過ぎていく。


 二人の話す内容に心の中で同意しながら、僕はまたシャッターを切った。



 思い返せば、僕の人生の大半は律に染められていた。

 

 何かに迷ったときは律の言葉が僕の背中を押してくれて、挫けそうなときはいつだって律の存在が心の支えになっていた。


 律は僕のすべてだった。



 スクランブル交差点の信号が青に変わる。

 律の広告を名残惜しく思いながら、僕は忙しなく足を進める人の流れに身を任せた。


 すると、街には律の新しいCDに収録されるカップリング曲が流れ始め、商業ビルの大きなモニターに彼の姿が映し出される。最近決まったチョコレートのCMだ。


 チョコレートを齧る色っぽい姿に、街の女性の目はハートになっている。


 艶っぽい眼差しで射抜かれれば、誰だって彼の虜だ。

 

 最後にフッと魅惑的な笑みを零した律が画面から消えて、今流行りのドラマに出ている若手俳優が出演するCMに変わった。



 それを確認した僕は、歩きながらふと考える。

 

 律を色に喩えるならば――それは、青。

 普段は冷静沈着なのに、歌っている時は誰よりも情熱的。実は人一倍熱い男だって、ファンなら皆知っている。


 スーパーアイドルである彼の瞳の奥には、いつだって静かに青い炎が揺れている。

 

 その瞳を前にしたら、僕は一体どうなってしまうのだろう。

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