夢の舞台へ

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 大学三年生になると、誰もがゼミに所属することになる。それは大抵の学生の間では常識で、例に漏れず僕もどこのゼミに入るか、希望を出す必要があった。


 主体性ゼロの僕が悩みに悩んで選んだのは、奏と同じメディア系に特化したゼミ。たまに映画を観れることと、単位を取りやすい教授が担当していることが、そのゼミを選んだ理由。



 未だに自分の将来も決めかねているぐらいだ。

 漠然とどこかに就職できたらいいなあとしか思えない自分に焦りもある。


 だけどまだ就活までは時間があるし、一先ずはこのゼミで単位を落とさないように頑張ろうと思っていたのだけれど……。



 「吉良きら西園にしぞの、ゼミの親睦会来るよな?」

 「えーと……うん、行くよ」

 「幹事やってくれてありがとう」

 「好きでやってるから気にすんなって! またグループに詳細連絡するわ~」



 まさか、学科内の陽キャが集まるゼミだなんて知らなかった……。

 

 明らかに自分とは住む世界が違うのに、それでも親しく話しかけてきてくれるのはありがたい。ありがたいんだけど、その優しさが痛かった。


 親睦会をいきなり欠席するのは印象が悪すぎるだろうと思って行くことにしたけれど、今からでも断ってしまいたい。



 奏が一緒のゼミでよかったと心から思う。

 飲み会なんて数える程しか行ったことがないから、憂鬱と緊張が入り混じって今からどうにかなってしまいそう。


 バイトがあるから欠席で。

 そんな断りの常套句を何度も入力したけれど、結局送信ボタンを押すことはできなかった。



 典型的なノーと言えない日本人。

 奏からはお人好しってよく言われるけれど、人から嫌われるぐらいなら自分が我慢すればいいやって思ってしまう。


 親睦会が近づくにつれ、どんどん元気がなくなる僕を奏は何も言わずに見守っていた。いつものことだと、幼なじみの彼は虚無を抱えた僕にもうすっかり慣れてしまったらしい。

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