第30話【約束と契約】
「なぁアルタイル、聖剣ってなんだ?」
剣はもう元の鉄の剣に戻っている。先程の光を失い、素材そのものの光沢を見せている。
「うーん……誰かに祝福された剣、かな………?」
そう言うアルタイルもどういうものなのか良く分かっていないようだ。
「祝福…………」
「例えば教皇様や神様みたいな高位の人がやると思うけど‥‥」
「ふーん、じゃあ今祝福したのは?」
「分からないな‥‥女神様も数が多いから‥‥」
(女神、か‥‥いつかお礼を伝えなきゃな‥‥)
「……アラタ、騎士として認められるためには今度ある【現騎士戦】で勝たなきゃいけない」
「ああ」
「それで、戦う相手なんだけど‥‥」
「いったい誰なんだ? 強いのか?」
「…………最も優秀で、剣術、魔法、精霊術の三つをバランスよく、高練度で扱う騎士」
「………は?」
(それ‥‥勝てなくね?)
「上位騎士、【ラナン・ローレンティア】。僕たちと同世代で、例外の僕を除いて世代最強を謳われる男さ‥‥」」
「世代、最強‥‥」
(アルタイルに迫る騎士………勝てるのか、そんな奴に‥‥化け物級に…………⁉)
「僕も君に伝えられる力は全部伝える。そうしないと彼には勝てない」
「頼む、アルタイル。俺に力をくれ」
「分かった」
「…………いいのか?」
「王命だし、それに‥‥困っている友達を助けることに理由なんているのかい?」
「…………ありがとう!」
「君は【剣士の加護】を持っているから最低限の剣才はもっている」
「それリーリルも言ってたな‥‥」
「だから君に求めるのは加護との【第二契約】だよ」
「‥‥第二契約?」
誰かと契約した覚えはないんだが‥‥。
「加護の取得、会得を契約って言うんだよ。そして第二契約は更なる力を求める契約」
「更なる力‥‥どうやって…………?」
「自分の内側に意識を向けてみるんだ」
座禅を組み、目を閉じる。己の身体に、精神に、【魂】を感じる。
「…………」
暗い。何も見えない。目を閉じているとかの話じゃない。
精神空間が、真っ暗だ。
『よぉ‥‥俺』
「お前は……オレ?」
『おうよ、オレは俺だ』
「何故、お前はいる?」
「さぁ? それはお前が一番よく分かっているんじゃないのか?」
(俺が、一番?)
そうだ‥‥。
「お前が生まれたのは十年前、リーリルと出会った夏休み‥‥」
『そうだ。覚えてるか? 【アイツら】を』
「アイツら…………」
リーリルを奪おうとしてきた謎の者たち。今思うと人間ではない。
殴った傷は再生していたし、謎の怪力をもっていた。
「あの戦いでお前は生まれたのか」
『そのとーり。お前の生きたい、守りたいって想いから生まれた存在、それがオレだ』
「…………お前は、剣の加護………なのか?」
『いーや、正確にはそれともう一つ、【タイムスキップ】とも融合しちまった』
「…………じゃあ、第二契約だ」
『いいぜ、お前はオレだからな。代償は無しにしてやるよ』
「助かる。それで力は?」
『お前のイメージを力にする』
(また、イメージ…………)
ただ、それが力になる世界だ。
「剣は魔法を斬れるようにしてほしい。そしてタイムスキップは…………」
俺の言葉を聞いたオレは驚いた顔を見せる。
『……使いこなせるのか、それ』
「使いこなすんだよ。そうしなきゃ、化け物には勝てねぇ」
『…………契約成立だ。…………お前に力を与える』
「そうだ、お前のことはなんて呼べばいい?」
『ああ? そうだなぁ‥‥…………シン。音花シンと呼べ』
「シン、シンか‥‥よろしく、シン」
「おう」
そして現実へ。
「………終わったかい?」
「ああ、終わった」
「代償はどうなった?」
「何もないってさ」
それにアルタイルは笑った。
「まったく、君は本当に規格外だね!」
「お前にだけは言われたかねーよ…………」
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