第27話【確定せし未来】

二年後の未来。日本の福岡県福岡市博多区。

そこは正に地獄。九日前に現れた妖戒(ディザスター)によって、既に日本は大部分が壊滅。

地理的に残った福岡も、残すは博多区と中央区。

『国連は妖戒の要件を飲み、日本を、奴らの、統治下に置くことを……決定しました……!』

妖戒は異世界から来た化け物。手始めに日本を治め、世界を一度滅ぼし、奴らの理想郷を創ることを目的に動いている。その為に日本に暮らす人々を、老若男女問わず掃除した。

自分たちが治めるに値する、強き者を選別する為に。

そして、奴らの目的はもう一つある。

【白雪六花を手に入れ、魔王の妻とする】

そして既に彼女は奴らの手に堕ちた。今日、福岡で結婚式が行われる。

国際連合は日本を見捨てた。いや、それ以外の選択肢はなかった。

たった七体の敵によって日本が壊滅したのを、見ていたのだから。

各国の首相は日本に対して懺悔していた。通るはずのない謝罪を繰り返していた。

発狂しそうになっている者も少なくない。いつ自分の国が滅ぼされるのか分からない状況で。

「誰か、助けてくれ……!」

「神様…!」

「助けて‥‥!」

「希望を…………」

「明日への希望を…………!」


同刻、異世界。

『世界間開通門、ゲート開門まで十秒』

「アラタ、君にとって悲願なのだろう? 帰ることが」

「ああ‥‥だけど、今はみんなを助ける」

「相手はあの妖戒ですよ、大丈夫なのですか?」

「さぁ……けど、家に帰るのに理由なんていらないだろ」

「それは…………そうですけど…………」

「君らしいね」

『ゲート開門』

この時、二つの世界が繋がった。

「行こう、この戦いを終わらせに」

「『はっ! 団長!』」

「全軍。目標、最上位妖戒七体! 出撃する!」

【シリウス】の無い戦いを。己の肉体と、闘気、魔力で理不尽に対する戦いへ。



結婚式場の鐘が鳴り響く。しかし、ここまで虚しいウェディングベルがあるだろうか。

少なくとも、今までの日本にはなかっただろう。

「これより、新郎サタンベルゼ様、新婦シラユキ・リッカ様の結婚式を執り行います」

そこに集められたのは妖戒と国の要人たち。要人たちの一部は白雪六花を引き渡すことで国を守ろうとした。彼らがここにいるのはかなりの皮肉。

「新婦、入場」

扉が開くと白いウェディングドレスを着た六花が。

「…………」

(ごめんなさい、新くん。私は、あなたといたかった…………)

しかし、それはもう叶わない、はずだった。

「永遠の愛を、誓いますか?」

神父の問いに、魔王は答えた。誓う、と。

「誓いますか?」

「―――誓い―――」

「待った…………!」

「…………晴也さん…………⁉」

そこに立っていたのは、音花新の親友、高橋晴也だった。戦闘を行ったのか、既にボロボロ。

「絶対に、白雪さんは渡せねぇ…………渡しちゃいけねーんだ…………!」

「やっ、やめなさい!」

議員、政治家、国を守る使命を背負っている者たちは晴也を止めようとする。

「……異能力、〝天荘爛駕〟…………!」

二年前に突如人間が発現した能力。異世界のマナの影響だろう。

「一式……雷火………燐赫…………!」

赤い閃光が魔王に直撃する。しかし、敵は無傷。

「クソ、が…………」

その時だった。式場の、いや、六花の目の前に、ゲートが開いた。

「なっ…………ゲートだと⁉」

「…………!」

「―――コスモス王国騎士団団長、対妖戒世界連合軍代表騎士………そして、白雪六花を愛し、この結婚式に異議を申し立てる者!」

懐かしい。もう二年になるのか、そう思う六花の前に現れた少年。

「この式、ブッ壊していいよな? ……… 助けに来たぜ、六花。…………そして、世界!」

「………おかえりなさい…………新くん!」

六花はアラタに抱き着いた。二年前、穴によって断ち切られたこの二人の時は、地獄の中で進みだした。

「君たちは、状況が分かっているのか? 既に日本は制圧している! それに、人質が中央体育館に―――!」

「大丈夫だと思うぞ?」

「何…………?」

「だってそっちには…………俺の相棒、最強の剣聖が行ってる」


「さあ、人質を解放してもらおうか。僕も、神剣ギルガも、君達相手では加減できない」

 剣聖アルタイル・レアン・ヴァルノウドを覆うのは、二つの世界から送られる加護。


「形勢逆転サヨナラホームランってところか。………テメェ等、俺の大切なものをここまで壊したんだ…………覚悟はできてんだろうな…………!」

「そんな顔をするものではない。――――――【勇者】よ」

音花新を覆うのは、己の闘気。女神、天使、魔女の祝福、加護。


「―――――――――――全力解放…………限界突破!」


そして――――――――――――――――――――――――【勇者の覇気】

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