第26話【実戦開始】

「それでアルタイル、魔の森ってなんなんだ?」

向かっている最中に聞いてみた。

「コスモス王国の中でも危険な土地でね、魔物が多く生息しているんだ」

「魔物‥‥」

(マジでゲームみたい)

「魔物を狩るのも、騎士の仕事さ」

「なるほどなー‥‥そんなところで訓練するのか⁉」

「何事も実践あるのみ!」

「マジかよぉ‥‥」

現在、背部のジェットパックで飛行している。闘気の機構らしい。

「大丈夫だよ、換装もあるから」

「換装‥‥? それってどういう‥‥」

「さ、見えてきたよ!」

「! あれが、魔の森‥‥」

黒みがかった木が乱立する天然の森。

そこはあらゆる魔獣が暮らす理想郷。しかし人間に対する恵みは一部を除いて存在しない。

「えっと‥‥いたいた!」

「なにが?」

「あれだよ」

「あれ‥‥?」

ズームしてみると、一匹大きなトカゲのような‥‥―――デカすぎる‥‥。

「二十M以上あるじゃないか‥‥!」

「あれはガイアドラゴン。竜の一種さ」

「ドラゴン‥‥!」

(翼が無いけど‥‥確かにあれはドラゴンだ)

コモドオオトカゲなど目じゃない。それ程の威圧感と現実感。そして本能の恐怖。

「怖いかい?」

「…………ああ‥‥けど大丈夫だ!」

(俺はここで止まれないんだ!)

「取り敢えずあれを討伐してほしい。最近街で暴れてる個体だ」

「―――任せろ!」

急降下してドラゴンに接近する。

(頼むぞ、フォーマルハウト!)

「バンカーブレード、起動!」

両腕から実体の刃が飛び出し、前腕と連なるように固定さる。

「――参る!」

『‥‥グゥウアアアアアアアアアアアア!』

気付いたガイアドラゴンも戦闘態勢に入る。

「フゥ‥‥――――」

背部ブースター最大出力。闘気変換炉最大稼働。

「だぁあああああ――――――ッ!」

竜の鱗に刃を叩きつける。しかしそれはあまりに硬く、刃は簡単に弾かれた。

「アラタ、鱗の隙間を狙うんだ。頭部カメラからエネルギー砲を!」

「りょう‥‥かい!」

トリガーを押すと、頭部カメラが発光した。そして圧縮された魔力光線が鱗を一部溶かす。

「ここ!」

右のブレードを殴りつけるように刺した。

そして一瞬竜が怯む。こういう姿はあちらの動物と何ら変わらない。

(‥‥変に怖がるな‥‥前に進め!)

不思議だ。知らないはずなのに―――どうやればいいのか分かる!

操縦桿を握り締め、ブースターを吹かせる。

「‥‥せあっ!」

X状に交差させたブレードで切り開くように斬りつける。

蹴りで距離を取り、光線で鱗を削る。

「慣れたような戦い方だね、アラタ」

「なんでか分からないけど、分かる…………!」

「もしかしたら君は、どこかの騎士じゃなかったのかい?」

「さぁな、けど今はコスモス王国騎士見習い、それでいいだろ!」

「うん…………そうだ。そうだね」

(デカトカゲ、俺はお前に止められて諦めるような目標を持ってないんだよ)

答えない大地の竜に心で声を掛ける。

(俺は、世界の境界線なんて超えてやる)

 今言える心の誓いをイメージする。

(俺は六花に会うんだ)

 あの楽しい日常を取り戻す。

(あの笑顔を振り撒く天使の元に、俺は絶対に…………)


――――――帰ってみせる!


『グゥウ…………ガァアアアアアアアアアアアア!』

俺の心を読んだようにガイアドラゴンは咆哮を挙げた。

「ああ、行くぜドラゴン!」

互いに突進し、最後の一撃を放つ。

「――――でぁあああああ!」

鱗の薄い腹部を貫き、結果心臓を抉った。

『ガァ…………』

「はぁ、はぁ、はぁ‥‥! 終わった、やった…………!」

「凄いよアラタ! 初めてでドラゴンを討伐するなんて!」

「あり、がとう……!」

(ヤバい、体力が…………)

「けど、まだ帰らせてくれないみたいだよ」

「は…………?」

天から降りてくる巨大な影があった。

「天災種、ホークス………国を滅ぼしたという伝説の魔獣さ」

「…………⁉」

「あれは、僕が討伐するとしよう」

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