第24話【就職内定】

「剣聖様、お客人、ご入室願います」

「はい!」

「………はいっ!」

目の前の扉が開く。今更だが、こんな服装でよかったのだろうか。

普段着のパーカー…………駄目じゃね?

「剣聖アルタイルよ、その者が報告にあった勇敢な者か?」

王の間に入ると、様々な人が待っていた。その頂点に、現コスモス王国国王の姿があった。

アルタイルから聞いた名前は確か、【ガイアス・フィニスター・コスモス】。

「は、我が友、オトハナ・アラタで御座います」

「ほぅ……苗字が先とな、随分と辺境から来たらしい…………」

「ご紹介頂きました音花新で御座います。コスモス王様、謁見の機会を頂き光栄です」

「平民にしては随分と礼儀が成っているようだが、どこの生まれだ?」

(ヤバい、どうする…………正直に行くか‥‥?)

「王よ、彼には名前以外の記憶が無いようなのです」

そう言ったのはアルタイルだった。

(記憶が無いって言っておいてよかった…………)

「そうか、所作は身体に沁みたもの‥‥ではオトハナ・アラタ」

「はっ」

「お主は我が娘、リーリルと面識があるか?」

「…………えっ?」

「リーリルに記憶回復術を施したのだが、お前のことを探しているようなのだ、〝ツシマで会ったアラタ〟とな」

「…………!」

(確定だ。あのお姫様は、小二の夏に出会った【あのリーリル】………!)

「娘は十年前に行方不明になったことがあってな。一か月後に帰還したが、六年前にまた消えてしまったのだ」

(十年前に一か月間…………時期も重なるな……けどここは…………)

「――申し訳ありません。私にはその記憶がなく…………お役に立てず、残念です」

「…………そうだな、すまない。こちらも夢中になってしまった」

「……王よ、よろしいでしょうか」

そう言ったのは剣聖アルタイル。

「申してみよ」

「この者、アラタは素手で氷の魔法を破壊し、速度で魔法使いを圧倒できる者です」

「ほぅ、それは……」

「〝剣士〟及び【騎士】としての教育を彼に受けさせることをお許し下さい」

「ちょっ、何言ってんだアルタイル‥‥!」

「………よかろう」

(は⁉)

「それはこちらから命じようと思っていたことだ」

「…………?」

「リーリルは私にこう言ったのだ【アラタを私の騎士にして】、とな」

「…………」

(…………何言ってんの?)

王は威厳を出し、目を輝かせた。

「剣聖アルタイルに命じる。客人を騎士、剣士として鍛えよ!」

「はっ!」

「ちょ、あのぅ…………」

(俺の意見は⁉)

まあ、どうしようもないか。王の決定だし。

それにこの道以外ではどうやっても生きていけない。国の庇護を受けなければ。

取り敢えず職。それで騎士はいい。けどリーリルの騎士って‥‥。

「よいかな、客人」

(…………ええいままよ!)

「‥‥未熟な身ですが、王女の命を守る〝騎士〟として命を懸けることを誓いましょう」

「良い返事だ。貴殿に英霊の祝福があらんことを」

「‥‥ありがとうございます」

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