第3話
彼から業務の具体的な指示を受けて
「わかりました」
口角が上がり頬の筋肉が緩み、私の顔はニコっと柔らかい笑みを浮かべる。
自分のだと言われたデスクに座ると、パソコンを立ち上げて早速資料を確認し始めた。
単純な作業というのもあるけれど、木下さんの的確な指示のおかげで思ったより業務が進む。
黙々と画面と向き合っていると、恰幅のいい女性社員が声をかけてきた。
「今からお茶を淹れるからついてきてちょうだい」
「わかりました」
ニコッと笑って席をたつ。
「人数もそう多くないから、一度で誰のお湯呑みかどうかは覚えられるわよね」
無表情にカチャカチャと湯呑の用意をしているのを隣で頷きながら仕事を覚える。
これを『仕事』と言ってもいいのなら。
…お茶。
そんなの飲みたければ自分で淹れるだろうに。
そこそこ大きな会社だと思っていたけど、まだ女性がお茶くみをするという悪習とも言える伝統は存在するらしい。
盆に湯呑を載せてひとりひとりにお茶を配ると
「若い人が淹れるお茶は美味いな」
課長がニヤニヤとした笑みを浮かべている。
下手をすれば女性二人にセクハラと捉えられそうな言葉を言い放つが、それを一瞥して彼女は席へと戻っていった。
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