第5話 デスアナルの鉄人
「ごめんなさい! 今日もジャガイモしかないの……」
ヘモロッド学園の食堂では、焼き立てのパンや濃厚なスープ、カリカリの七面鳥などを食べることができる。
――いや、正確に言うとできていた。
なんと、一月ほど前に発生した大規模な蝗害の影響で小麦や野菜類が全滅。なんとかジャガイモだけは確保できたという状況なのだ。
料理長のおばちゃんが申し訳無さそうに頭を下げる中、文句を言っても詮無いと思ったのか生徒たちは大人しくジャガイモを頬張っていた。
だが、そのジャガイモ生活に耐えられたのも2、3日の話である。4日目になると流石に限界が来たのか、食堂で空腹のあまり倒れ込む生徒や砂や石を食べる生徒まで発生した。
「むむむ、これは由々しき事態だね」
食堂で蒸したジャガイモを少しずつ齧っていた私に、同じハート寮のテイトが話しかけてきた。
テイトは実家が豪農のポニーテールが似合う女子だ。料理が趣味で、よく私にシャバシャバのカレーを作ってくれたりしていた。
「でもテイト、こればっかりはしょうがないわ。魔術で食料を生み出すには効率が悪いから、魔術で作ったところで結局お腹が減るだけで終わるし……」
「ロゼ。発想を変えるんだ。どうやって別の食材を手に入れるか、じゃない。どうやってこのジャガイモを美味しく食べるかを考えるんだ」
テイトは意味深なことを語りかけてくる。
「もしかしてあなたにはその方法が思いついているの? このジャガイモを美味しく食べる方法があるんだったら、私何でもするわよ」
「ん? いま何でもするって言ったよね?」
私の失言を彼女は聞き逃さなかった。
「え、いやでも……できることには限界があるけど……」
「頼むよ、ロゼ。あの入学試験で箱を粉砕消滅させたロゼの力が必要なんだ!」
テイトは平身低頭頼み込んできた。ここまでお願いされては協力するしかないか。それにジャガイモを美味しく食べられる方法があるなら私も興味がある。
「分かったわ。協力する。でも私は何をすればいいの?」
「ああ、それにはまず下準備が必要だね」
テイトは食堂から借りてきた大量のジャガイモを洗い始めた。
「ほら、ロゼもあたしが洗うの手伝って」
促されるまま、私も見様見真似でジャガイモの泥を落とす。
「最後に油を温めるよ。この料理は塩と油とジャガイモが欠かせないんだ」
テイトはそういうと、何かの金具を取り出した。
「それは何?」
小さなバケツの底に細かい穴を大量に空けたような金具である。
「フフ、これは使ってみてからのお楽しみだね」
意味深に笑うと、テイトは私に後ろを向くように言った。作っているところを見られたくないのか?
「さて、ロゼ。まずはスカートをめくって、肛門に詰め込めるだけジャガイモを詰め込んでくれ」
「えっ!?」
「早くしないと油が冷めちゃうよ。ほらほら」
そう言うが早いか、テイトは困惑する私のスカートをめくって、借りてきた全てのジャガイモを肛門に放り込んだ。
「それじゃあ、この金具をセットするからあたしの準備ができたらジャガイモをひりだしてくれる? ……いいよ!」
私はテイトの合図で、思いっきりジャガイモをひりだした。
ブリブリブリブリ――――とすさまじい音がして、ジャガイモが弾丸のように押し出される。そしてそれは金具の穴によって、細長い形に潰され、成形されていくではないか。
「よし、これをそのまま油で揚げよう」
細長い形になったジャガイモを、テイトは手際よく油で揚げていく。
そして、黄金色に揚がったそれに塩を振りかけた。
「あっ、これって――」
細長く揚がったジャガイモ。これは完全にフライドポテトではないか。
「おや、ロゼはこの料理の名前を知っているの? あたしが発明したものだと思ってたんだけど」
そう言いながらテイトは揚がったフライドポテトを一本齧ってみた。口元が緩み目尻が下がる。どうやら揚げたてのポテトはどの世界でも美味しいもののようだ。
「でも……テイト、汚いわ」
「熱で殺菌されてるから大丈夫だよ。ロゼも食べてみなよ。美味しいよ」
「おほおおッ! クッソウメェ! ヤッベ!」
私もポテトを頬張る手が止まらない。私が脱糞ならぬ脱皮させて生んだジャガイモがフライドポテトになっている。やはり自分で作った料理はひときわ美味しい。
「ねえ、ロゼ。この料理の名前はなんていうの?」
「ああ、この料理の名前は――」
そう、この料理の名前は。
「フライドポテ
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