第4話 デスアナルvs寮分け水晶
「これより寮分けを行う!」
ヘモロッド学園のメインホールに教頭の声が響き渡る。今からヘモロッド学園名物の寮分けが始まるのだ。
寮分けは学園に代々伝わる不思議な水晶を使って決められる。触れた者の性格、能力、成長性などを見極め、適切な寮に分けてくれるという。
ちなみに入学が決まるまでといったら大変だった。首席合格で両親がびっくりして腰を抜かすわ、入学式の挨拶を読むために徹夜で暗記をするわで気が休まるときがなかった。
「やあ、ロゼ。いよいよ寮分けだね。一緒の寮に入れるといいな」
「おいおい、ロゼは俺と同じ寮に入るんだよ。お前はすっこんでな」
「ロゼさん、今日もお綺麗ですね」
「だめだめ。ロゼちゃんはボクのだもーん☆」
「……ロゼ……フフフ……」
いまこちらに色気を垂れ流していたのは同じ学年のイケメン5人組だ。彼らは全員良家の御曹司であり、文武両道に優れており、さらに髪の色が全員違う。五人ともあらゆる面で女性を虜にするのだが、彼らの詳細については追々。
そしてここが最も重要なのだが、全員が揃って金髪縦ロールお嬢様の私にベタ惚れしているのだ。
「ふふっ、ごきげんよう」
私がお淑やかに頭を下げると、彼らは顔を赤らめて下を向いた。かわいいなあ。デュフフ。
「それでは新入学生は全員、順番にこの『寮分け水晶』に触れていくように!」
教頭の指示に従い、新入生は一列になって寮分け水晶の前に並ぶ。
まず最初の一人目が水晶に触れた。
「ふむ。才能はあるが少々卑怯なところがあるようだな。そして剣術に優れている。……スペード寮!」
水晶が一通り喋り、最後に寮の名前を叫んだ。
ヘモロッド学園にはスペード寮、ダイア寮、ハート寮、クラブ寮の四つの寮があるのだ。
一人、また一人と水晶に触れ、新入生の所属寮が分けられていく。
先ほどのイケメン5人は全員がハート寮の所属となった。後続の女子たちは自分もハート寮に入ろうとすごい目で水晶を睨みつけているが、どこ吹く風で無常にも寮分けは進んでいく。
「それでは……アスーヌ・ロゼ! 水晶に触れなさい」
私の順番が来た。やはりここはハート寮がいいだろう。ハート寮に入れたらいいな。いや、ハート寮に決まっている。
「ふむ。……首席合格者か。剣術も魔術も微妙だな。家名だけはあるようだ」
水晶に触れると、開口一番から失礼なことを言われた。
「むむむ……これは難しいな。下劣な欲求にまみれ、強欲だ。個人的には退学でもいい気がするが……」
水晶の失礼な講評は続く。
「クラブ寮かな……」
「えっ!?」
思わず大声が漏れてしまった。このクソ玉は何を言っているんだ?
「ハート寮がいい。ハート寮がいい。ハート寮がいい。ハート寮がいい……」
小声で水晶にささやき続ける。まあ、ここまで頼んでいるのにハート寮にしないわけがないだろ。
「ふむ。自分の所属する寮を操作しようとする傲慢さもある、か。ダイア寮かも……」
「おい!」
「クラブ寮かダイア寮かで悩むな……」
ハート寮は完全に選択肢の外か。
私は怒りに任せ、水晶玉を引っ掴んで肛門に入れた。寮分け水晶はあっという間に私の尻に隠された。アルセーヌ・ルパンでも驚く手際の良さだ。
「ふんッ」
そして、そのまま粉砕しても良かったのだが、一気に力んで水晶玉をポンッと取り出す。
「うわっ、寮分け水晶が寮分け棒になってるッ!」
あちこちから騒ぎ声が上がる。
私の【デスアナル】によって、それは水晶玉から完全にただのガラス棒に変形させられていた。
「で、私はどの寮になるの?」
私は床にひり出されたガラス棒に向かって高圧的に問いかけた。
「は、ハート寮です……」
元・寮分け水晶の自我は完全に崩壊していた。
「ロゼ。キミもハート寮か。良かった」
「ロ~ゼ~! 俺は別の寮に行っちゃうんじゃないかと心配してたんだぜ~!」
「おやおや、ロゼさんが私を差し置いて他の寮に行くわけないでしょう」
「ローゼーちゃーん☆ さっそく部屋行っていい? いいよね?」
「……ロゼ……一緒……」
例のイケメン5人組が他の女子を置いて駆け寄って来る。
「あらあら、おほほほ。偶然一緒の寮になってしまいましたね。今後ともよしなに……」
だがアスーヌ・ロゼはお嬢様なのだ。あくまでお淑やかに。最強の肛門を持っていても……。
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