第5話 進〇の巨人かよ!?

 ――ゴルルルル……。


 そのゴブリンは従来のイメージとは違い、20メートルはありそうな手足の長い巨体を持っている。

 数は3体で、どれも人間のどくろを無数埋め込んだおぞましい棍棒を握っていた。


 ……進〇の巨人かよ!?


 どうみてもゴブリンじゃなくて巨人でしょこれ!? 

 緑の巨人にゴブリンという名前を付けたって言われた方が幾分マシだよ!!


「ジョルジュ!! お前はレックスに乗って攪乱するんだ!! その間に俺らが攻撃する!!」


「分かった!! 行くぞレックス!!」


 ――ギュオオオオオンン!!


 冒険者の1人がワイバーンに乗った後、ゴブリンへと飛び上がった。

 どうもワイバーンはレックスという名前らしい。


 なお私は言われた通り後方に下がって、木の陰に隠れながら戦いを見届ける事に。


 ――ギュオオ!!


 ワイバーンが飛びながら火球を放つと、ゴブリンが手にしている棍棒で防いでいった。

 

 ただすぐにワイバーンが背中に回り、火球を1発。

 それを喰らったゴブリンがよろめいていく。

 

 ……飛行スピードが速くて驚くけど、火球喰らってよろめくだけって耐久力ヤバくない? 

 大丈夫かなこれ……。


「図体でかいからってええ!!」


 そこに冒険者2人がジャンプし、ゴブリンの両目を剣で突き刺す。


 ――ガアアアアアアアア!!


 目つぶしを喰らって悲鳴を上げるゴブリンに対し、冒険者が口の中へと剣をねじ込む。

 それが致命傷となったのか、ぐらりと倒れ込むゴブリン。

 

 なるほど、急所を当てて倒す感じか。

 というかマジで進〇みたい。冒険者に立体機動装置装備させても違和感なさそう。


「いいぞぉ、あと2体……」


 ――ゴルルルルルアアアアアアアアンン!!


「うおおお!!?」


 残り2体が怒りだしたと思えば、棍棒を乱暴に振り回していった。


 草原が土ごとひっぺ返されたり木がなぎ倒されたり。

 しかも運悪く近くにいた冒険者が喰らってしまい、草原へと転がってしまう。


「ぐわああ!! ぐうう!!」


「お、おい!! 大丈夫か!!」


「う、腕が……ぐう!!!」


「マズいぞ……おい、この一帯のゴブリンが強いなんて聞いてねぇぞ!! 前のはワイバーンの火球でダメージ受けて……」


「地域の差って奴だろ!! それよりもこの状況……ってうおおお!?」


 冒険者とワイバーンに棍棒が襲いかかるも、彼らが慌てて回避する。


 潰されなくてよかった……でも冒険者の方々の状況からして、かなり押されているのは間違いない。

 まさかゴブリンでここまで苦戦するなんて……。


「くそっ!! これじゃジリ貧だぞ!! どうする!?」


「……ああもう!! くそったれが!!」


 するとその時だった。

 冒険者の1人がこちらに向かった途端、私の腕を掴むなり引っ張り出してきた。


「えっ、えっ!?」


「おらっ、ゴブリンども!! お前らの好きな女がここにいるぞ!! 好きにするといいさ!!」


「ちょっ!!? 急に何を!!」


「悪いな! ゴブリンは人間の女に目がない性質でね、あんたならあいつらを喜ばす事が出来るだろうさ!! まぁ運が悪いと思え!!」


「えっ!? はっ!?」


 ――ゴフ!! ゴフウ!!


 私を見た途端、興奮でもしているのか鼻息を鳴らすゴブリン達。

 一方で私が唖然としている間、冒険者達が腕を折った仲間へと向かって行ったのだ。


「じゃあ俺達は逃げるから! あとは上手くやんなよ!!」


「やんなよって……ちょっと!」


 ズン!!


「ヒッ!?」


 ゴブリン達が私の目と鼻の先に立っている。

 しかもその目つきがいやらしいものになっていて、まるでこれから痴漢をしようとしているおじさんみたいだ。


 ……ヤバい、ヤラれる……。


 退治してくれると思っていた冒険者は私を差し出し、その私は武器もない普通の女の子。

 そして目の前には、私を慰み者にしようとしているゴブリン。

 

 完全にピンチ……いやピンチどころじゃない最悪の展開。


 ああ……やっぱり運が悪いや、私。

 冒険者の言う通りにしようかとか、そう思ったのがいけなかったんだ。


 これから私は、このでかいゴブリン達の玩具にされて……。


 ――ゴルル……。


「っ!」


 手を伸ばしてくるゴブリンに対して、つい目をつぶってしまった。

 そうしてなす術もなく捕まるはず……だったのに。


 ドオオオオオオンン!!


 何故か突然、轟音と共に私の身体が吹っ飛ばされていった。


「わああ!!?」


 ――ゴアアアアアアアアア!!?


 それはゴブリン達も例外じゃないらしく、彼らの悲鳴までもが聞こえてきた。


 一体何事……?

 草原に倒れた身体を起き上がらせると、さっきまで私とゴブリンが居た場所に粉塵が立ち込めている。


 その粉塵の中に、何かがいる。

 ゴブリンと同じくらい大きさの、それでいてゴブリンとは全く違う姿の。


「あれって……」


 粉塵が徐々に晴れていくにつれて、姿形がハッキリしてくる。

 

 全身を纏っている銀色の鎧、まるで怪獣か恐竜のような容貌に背中の1対の翼。

 顔立ちの凶暴さも合わさって、先ほど至近距離で見たワイバーンを思い出す。


「……ドラゴン?」


 その姿は、ファンタジーで有名なドラゴンその物だった。

 ただ1つ違うのは、ネルソン帝国のファフニールよろしくロボット然な見た目をしている事だった。



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