第31話 ファーマル防衛線3 Sランクパーティー『月下の宴』参戦
「行くぞリューネ、街へは一体たりとも入れはしない!」
「ヒャハハ、人間相手に数で押し切ることは出来ても、アタシには通用しねェんだよ、雑魚豚が!」
リューネが拳を一突き、直線上のオークたちをまとめて吹き飛ばしていく。
「街の防壁付近のオーク全てを一掃する! 頼む、リューネ!」
「おらァ! 一突きで果てる野郎に興味は無ェんだよ! せめてシアンの柱みたく楽しませてみろよォ! ヒャハハハ!」
俺たちの目的は、Sランクパーティー『月下の宴』のみんなが来るまで街を守ること。
今のところ、防壁さえ無事ならオークの侵入を防げている。
リューネの拳なら今のように一突きでオークをまとめて倒せるし、近付いてくるオークを蹴散らしていれば、防壁付近にいる冒険者や騎士さんたちを守ることも出来る。
「うわあああ!」
「柱魔法アルズシルト!」
リューネの攻撃の範囲外だったオークたちが俺たちに襲いかかってくるが、なんとか柱魔法を出し、動きを抑える。
くそ……今ここにいる中で、オークを倒せるのがリューネ一人っていう状況は辛い……俺の柱魔法は防ぐだけだし……。
ロイネットとウオントの二人がCランク冒険者で一番可能性はありそうだが、オークの数に圧倒され、完全に戦意喪失で怯えてしまっている。
「そういえばアイリーンさんとヴィアンさんに貰った魔宝石がある!」
柱魔法で抑えているオークの群れに、二人から貰った魔宝石を投入。
オークの鎧に触れた途端爆発が起き、彼等を吹き飛ばし、同時に発生した黒猫の形の炎が後方のオークたちを貫通していく。
すご……! さすがアイリーンさんとヴィアンさんの常用アイテム。
「……きたぜェ、シアン。雑魚エルフどもだ」
リューネが拳の一閃で街に近付くオークを吹き飛ばし、俺が柱魔法でオークの攻撃を防ぐ。
これを何度も繰り返していたら、街の南の街道のほうから来る爆速の馬車が見えた。
もはや壊れる寸前状態の馬車の屋根が吹き飛び、一人の女性が緑の風を纏い飛び出してくる。
「シアン……! 私のシアンは無事!? ……どきなさい……! 私とシアンの感動の再会を邪魔するのなら……全身輪切りにしてあげる……!」
長く綺麗な髪をなびかせ、特徴的な耳を持つ美しい容姿の女性が俺の名を叫び、森から無限に湧いてくるオークの群れを睨みつける。
「ウインディアブレード!!」
女性の剣が緑に輝き、風を纏った斬撃を放つ。
数十体のオークを切り裂くと同時に女性がジャンプし、オークの頭の上を器用に走り始める。
「シアン! いた、シアン! 良かった……生きてた!」
「うわ……ってルナ……! 俺は無事で、冒険者のみんなと騎士のかたが頑張ってくれて、あとはほとんどリューネが……うぶふぅ!」
足に纏わせた風を上手く使い、とんでもない速度でオークの群れの頭の上を走ってきたルナが、そのままの勢いで俺に抱きついてくる。
ほごぅ……俺、メイメイさんみたいな筋肉は無いので、そんなの受け止められねぇ……!
「良かった……シアン……無事で良かった……うわあぁん、心配したの、すっごい心配してたのー!」
俺を地面に押し倒し、ルナが感情的に泣き叫ぶ。
「……ありがとう、ルナ。俺は無事だよ」
こんなに顔ぐっしゃぐしゃにして泣くルナを初めて見た。
それだけ心配をかけてしまったってことか、……これは俺のせいだな。
ごめんよ、ルナ。
「アタシが側にいるんだから、シアンは無事に決まってんだろ、クソエルフ」
「……うわぁああ……ありがとうリューネ……シアンを守ってくれてありがとう……」
とりあえず街の防壁付近にいたオークを吹き飛ばしてきたリューネが俺の側に来てルナにいつもの憎まれ口を言うが、ルナがそれに反論せず、泣きながらお礼を言う。
「……え、うっわ、キッモ……クソエルフにお礼言われるとかありえねェって……」
絶対に言い返してくると思っていたリューネが驚き、予想外過ぎたのか、ちょっと引き気味。
「いっくよー、そぉれ! メイメイ式手動ジャンプトラップー!」
「……シアン、無事……街も、無事……パーフェクト……」
数千、数万というオークの軍勢の端っこのオークたちが次々に空に打ち上げられ、投げつけられた魔宝石の爆発で散っていく。
あれはメイメイさんに、アイリーンさん。
「よくやったシアン少年。今度ご褒美をあげるから、期待しておいてね」
女性から放たれた黒猫の形をした炎が一直線にオークたちを貫き、俺たちの元へと道が出来上がる。
この魔法は見間違いようがない。ヴィアンさんだ。
「ルナレディアお姉様、今は街の安全確保が第一です。……あと、無事で良かった」
出来上がった道を瞬時に駆け、一人の女性が俺とルナの前に立ち、オークに剣を構える。
ルウロウさんがルナに声をかけ、最後小さい声で俺に呟く。
「シアン君、リューネさん、無事でなにより。道中、ルナレディアがずっと泣いていて大変だったんだよ? あはは。さて……ジャッジブリンガー!」
俺たちの前にさらにもう一人、大きな大剣を構えた男性、これはロイドさんだ。
ちらと俺を見て微笑み、攻撃をしかけてきたオークキングの武器ごと大剣で斬り裂いていく。
「みなさん、よくぞここまで耐えてくれました。これより、我らSランクパーティー『月下の宴』が加勢いたします。さぁ、反撃と行きましょうか!」
「……お、おおおおお! 本当に『月下の宴』の人が来てくれたぞ!」
「すごい、ロイドさんにメイメイさんにヴィアンさんに……もうフルメンバーだ! これは勝ったぞ!」
「行ける、これは行けるぞ! 俺たち勝てるぞ!」
ロイドさんが剣を掲げ叫ぶと、冒険者、そして騎士たちも吼え、皆武器を構え始める。
いけるぞ、これでオークを倒せるメンバーが増えた。
守る戦いから、攻める戦いに打って出れる……!
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