第27話 エルフ大樹の森のオーク討伐4 移動結界四回目でエルフの集落へ
「……オークキング発見……数一、二、三……数えるの無駄」
ルナが三回目の移動結界を開いてくれたが、その先にもオークの群れが。
しかもさっきまでの五メートルクラスのオークに混じって、さらなる巨体、七メートル以上はありそうなオークまでもが多量にいる状況。
あれがオークキングってやつなのか……なんという大きさ……。
狐耳パーカーの女性、アイリーンさんが木に登り数を確認するが、数えるのも無駄レベルらしい。
それもそのはず、俺たちの周囲にはオークとそのオークキングがひしめいている。
そしてその巨体のオークキングがランダムジャンプの罠にかかって、空から降ってきているんですよ。
リューネが吹き飛ばしてくれているから平気だけど、本当に異様な光景。
「次、最後の四回目開きます! カウント五、四……」
ルナが移動結界を開く動きをし、ロイドさんとメイメイさんがそれを守るようにオークたちの攻撃を受け止める。
四回目、これが最後……次に飛んだ先にエルフの集落があるのか。
一体どういうところなんだろう。
「黒猫ニョーン!」
黒いドレス風の服を着たヴィアンさんが杖をかざし、叫ぶ。
今度のは杖の先から巨大な黒猫の形の炎が膨れ上がり、満タンになったところで口から極太ブレスを吐くという豪快な魔法。
ニャーン、ニューンときてニョーンか。
なんという独特のネーミングの魔法なのか。
そしてニョーンの炎は「貫通&延焼」らしく、次々とオークたちが焼かれていく。
可愛い魔法に見えるけど、オークより巨体のキングの身体をも貫通しているレベルの強烈な威力。
「汚ねェ手でシアンに触んな、クソオークが!」
俺の後ろでリューネの拳が炸裂。
巨大な斧を持ったオークキングがリューネの拳の衝撃で消し飛び、その後ろにいたオークやキングたちをも貫通して消し去る。
しまった、またヴィアンさんの魔法に見惚れてしまった……その、言い訳を言わせてもらえるのなら、可愛いんだってヴィアンさんの魔法。
「ありがとうリューネ! よし、ルナの近くへ!」
「……一、ゼロ! みんな最後の移動結界よ! 一秒以内に飛び込んで!」
ルナが叫び、全員が開かれた光の輪に飛び込む。
四回目の移動結界! 俺たちの身体が光に包まれ、足が浮くような不思議な感覚が来たと思ったら、さっきとは違う森の香りが鼻に入ってくる。
「……オークキング複数確認……数は、五……」
急に足に感覚が戻ってきて、地面に着地。
すぐに狐耳パーカーの女性、アイリーンさんが近くの木を駆け上り、周囲の確認。
少し離れた位置に、装備がボロボロになっているオークキングが五体いる。
あの感覚狂いやランダムジャンプを徒歩で乗り越え、ここまで辿り着いた猛者。
ルナは運が良くて一年と言っていたが、はたして、彼等はここに辿り着くのに何年かかったのだろうか。
そして、そこまでして何を求めているのか。
俺たちに気が付いたオークキングたちが一斉に巨大な武器を構え、襲いかかってくる。
「ここからはエルフの集落が近いの! そして彼等はここまで徒歩で辿り着いた強者よ、気を付けて!」
ルナが剣を構え、風の魔法をまとわせ始める。
あれか、ファーマルの街で見た、風の魔法剣的なやつ。
「ウインディアブレード!!」
ルナの剣から風切り音が鳴りだし、オークキングが振り下ろしてきた巨大な斧を次々と斬り裂いていく。
「はいよー! 丸腰オークキングのメイメイ式ジャンプトラップー!」
武器を無くしたオークキングを、メイメイさんが手にした武器、巨大な鉄球付きこん棒で掬いあげるように打撃、一匹ずつ空へと打ち上げていく。
メイメイさん……筋肉すごいと思っていたけど、想像以上のお方でした……。
「行くよ、黒猫ニャーン!」
「……そういえばさっき貰った……」
空高く打ち上がったオークキングにヴィアンさんが黒猫貫通魔法を、そして狐耳パーカーの女性、アイリーンさんがさっきヴィアンさんに貰った魔宝石を投げつける。
ヴィアンさんのニャーンが一体のオークキングの腹を貫通。
そしてアイリーンさんの投げた魔宝石が爆発、中から同じく黒猫の形の炎が勢いよく飛び出し、二体目のオークキングを貫通。
「これは僕の為にやってくれたのかい? まるで的だ……! ソニックブレイド!」
ロイドさんが飛び上がり、大剣を一閃、三体目と四体目をまとめて斬り裂く。
「爆ぜろ豚の王……! 刺突爆発剣!!」
最後の一体にルウロウさんの剣が突き刺さり、内部から爆発が起き、オークキングは散っていく。
す、すごいな……さすがSランクパーティー『月下の宴』のメンバー。
ファーマルの冒険者や騎士は格下のオーク相手に苦戦していたってのに、Sランク冒険者ってのはオークキングすら簡単に倒せてしまうのか。
そして俺の出番、無し。
「……周囲にオーク、いない……大丈夫」
狐耳パーカーの女性、アイリーンさんが木の上から安全宣言。
良かった、これでエルフの集落にオークキングの侵攻は無さそうだ。
「何をしに来た人間! 無断でエルフの領域に入るとは、無礼にも程があるぞ! 帰れ!」
少し休憩をしていたら、森の中から弓矢が多量に飛んでくる。
ロイドさんがそれを大剣で一閃、全てを叩き落とす。
びっくりした……誰だ? エルフ?
よく見ると、遠くにルナと同じように耳が長い男性が十人ほどいて、こちらに向かって弓を構えている。
「こんにちは、僕はロイドと言います。何度かお会いしていますが、今回もエルフの集落付近で異常発生しているオーク討伐に……」
「お前など知らん。余計なことをするな、人間ごときが。我らエルフは誇り高き一族、オーク討伐程度、人間の手を借りるまでもない!」
ロイドさんがニコヤカに挨拶をするが、向こうのリーダーと思えるエルフの男性が怒り気味に返してくる。
「しかし、この数のオークは異常です。年を追うごとに増えている。原因も不明なままで、これ以上は例えエルフの集落といえど、オークの侵攻の被害に……」
「そうか、お前らがオークを連れてきたのだな? 我らエルフの生活を脅かした罪、死をもって償え!」
ロイドさんが必死に訴えるが、エルフの男性は聞く耳持たず。
逆にこちらを敵認定して弓を構える始末。
ちょ、言いがかりも甚だしいぞ……エルフってこういう人たちなのか?
「いい加減にしなさいジルアート! 彼等は私がエルフ集落の安全の為に連れてきた冒険者、Sランクパーティー『月下の宴』の方々よ!」
ロイドさんの前に同じくエルフの女性、ルナが出て男性に向かって叫ぶ。
やっば、ルナが激おこだぞ……。
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