第19話 朝の肌色視界でトラブル&バトル
「……朝か……ふぁあ、ってここどこだ! ……あ、そうか、俺王都で冒険者になったんだっけ」
朝目覚めると、見慣れない天井。
どこだここ、と本気で焦るが、そういえば俺、今王都にいるんだった。
「…………冒険者、かぁ」
ベッドの上でグイっと背伸びをし、やっと回り始めた脳で昨日までのことを思い返す。
こないだまで大陸西端のファーマルの街にいたのに、今や俺は王都でSランクパーティー『月下の宴』に入り、一人部屋まで手に入れてしまった。
いまだに自分の現状が理解できていないが、夢見ていた冒険者に俺はなれた。
「まぁ俺一人の力ではなく、ロイドさんの人脈を利用しての試験合格だからなぁ。俺もいつか攻撃スキルが欲しい……ん?」
喉が乾いたので、一階にある食堂で飲み物を貰いに行こうとベッドを出ようとしたら、下半身が重い。
え……そういえばファーマルの街で、怖い夢を見た後に身体が動かなくなるとか聞いたことがある……もしかしてそういう……!
「怖い夢を見た記憶は無い……じゃあなんで……え、う、うわあああああああ!」
妙に暖かくて柔らかい物が俺の下半身に絡みついている……ちょっと怖いが、勇気を持って布団をめくると、そこには肌色百パーセントの視界が広がっていた。
「……ァ……ンァ? ふァァ。チッ……うっせェな、なんだよシアン……トイレか?」
ダルそうに目をこすり、舌打ちをしている女性……え、なんで、なんでここにリューネが……?
そう、よく見ると、いや見ちゃいけない気がするが、全裸のリューネがそこにいた。
「み、み、見え……! リューネ、裸、それダメだって……!」
「わっぷ! あーもう、なんだよシアン! 朝からアタシとヤろうってのか?」
視界に広がる女性の裸……ちょ、リューネ、十六歳の俺には刺激が強すぎ!
慌てて肌色を目に入れないように布団をかけるが、それを振り払い、リューネが俺に跨って立ち上がり、腰に手を当て見下ろしてくる。
「フワ……全部見え……初めて……」
「あァん? なんだその反応? 女の裸は初めてか? ヒャハハ! なんだよ、まだあのクソエルフ女とはヤってねェのか! よっしャああああ、アタシがシアンのいっちばーん! 大丈夫だって、優しくしてヤっからよゥ……ヒャハハ!」
窓から注ぐ朝日に照らされたリューネの裸は、それはそれは美しく、初めてまともに見る女性の身体に見惚れていたら、リューネが悪そうにニヤァと微笑み、俺に裸のまま抱きついてきた。
「うわっ……! ちょ、やめて、優しくとか絶対嘘……! こういうのはキチンと段階踏んでから……ひぃぃやぁぁぁ!」
「ヒャッハハハ……! 段階? 知るかよそんな人間のルール。ヒャハ……いいじゃねェか……燃えるねェ、良い声で鳴くシアンを無理矢理ィィ!」
リューネががっつり俺のズボンに手をかけてきて、とんでもない握力で脱がそうとしてくる。
力つよー!
俺が抵抗するも、貧弱な俺では抵抗にすらなっていない。
って、リューネは人間じゃあなくて、伝説のドラゴンだったっけ……力比べで、勝てるわけがない……。
しかし……ドラゴンとはいえ、リューネの身体は本当に人間の女性そのものなんだな……出るとこ出てるし、柔らかいし……。
いや、女性の裸なんて初めてマジマジと見るので比べられないけれども。
「あ、開いた、よし、お、おはようシアン! 一応私、シアンの保護者だから、合鍵をね、勝手に作ったの。だからその、一緒に朝食を……」
「ルナレディアお姉様! 悪鬼とはいえ人間には法律が適用されまして、許可のない不法侵入は緊急時以外……」
裸のリューネの襲撃に頑張って抵抗するも、一枚脱がされ、二枚切り裂かれ、三枚食い破られ、せっかく昨日買ったちょっとお高い、寝る用の服が千切られていく。
なんか部屋のドアがガチャガチャされているな、と思ったら、急に鍵が解除されドアがフルオープン。
え……ルナにルウロウさん……? なんで俺の部屋に……? そしてこのタイミング。
「ァあん? なんだ、二人追加か? 別にアタシはいいぜ……でもまぁ、シアンの最初はアタシのものだけどなァァ! そこで指くわえて見とけ、クソエルフ!」
「は、裸……い、い、い、いやぁあああああああ! 私のシアンが襲われてるーーー!」
「き、貴様ぁ! 私のルナレディアお姉様を泣かせるとはいい度胸だ! 爆発微塵!」
動きを止め、ドアからの侵入者を見たリューネが悪魔のように笑いルナを煽る。
すごい着飾ったルナがリューネに襲われている俺を見て泣き崩れ、それを見たルウロウさんがキレて剣を構えて突撃をしてくる。
「ヒャハ……! シアンの柱の前に何も出来なかった雑魚剣士か! このアタシに剣を向けるってことは……死ぬ覚悟はあンだよなァ!?」
ルウロウさんを迎え撃とうとリューネが拳を構え……ってもうやめろってぇええ!
「そ、そこまで! 柱魔法アルズシルト!」
「お、うめェぞこのスープ。シアン、これマジうめぇ」
「ご、ごめんねシアン、リューネが勝手に部屋に入ってきたんだよね? それはだめだよね、うん、シアンは悪くないの。でも襲われる前でよかった……」
「お姉様、あの拳女の弱点とかないのですか? 次は弱点を突いて必ず勝ちましょう」
一階の食堂にて、みんなで朝食をいただく。
焼き立てのパンに野菜スープ。それに薄切りハムにサラダなんかがあって豪華。
……朝のことは俺が見た悪い夢、そういうことにしよう。
どうやらリューネは俺が寝た後に、どうにかして俺の部屋に侵入、裸でベッドに入ってきたみたい。
ルナもなんかさっき、勝手に合鍵作った、とか言ってたよね?
年頃の男の部屋に無断で入ってくるとか、なんなの、この二人……。
なんにせよ、俺、『柱魔法』を使えて本当に良かった。
リューネとルウロウさんの前に柱を出していなければ、二人のバトルで貰ったばかりの俺の部屋が吹き飛ぶところだった。
うーんと、ファーマルにいた時のほうが平和だったような気もするけれど、みんなで一緒に朝ごはんを食べられるのは嬉しいので、まぁその、プラマイゼロ、だろうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます