第5話 三人揃えば、色とりどりの!

 みんなこんにちは!わたしは会垣十色。


 この前下校途中に、トラックの扉から逃げ出したアヒルを捕まえるために、志織ちゃんと一緒に変身して色の魔法でなんとかしようとしたけど、思った以上に上手く行かなくて……。


 すると、三色のマフラーとクレヨンのベルトを着けた色の魔法使い、クレドゥシールというのが現れて、クレヨンから描いた線でアヒル達を次々と誘導して、みんなお家に帰してあげたの!


 しかもクレドゥシールの正体は、わたしが二度も助けた男の子、画葉染多君だったの!同じ学校に通っている一年生だから、いつでも会いに行けるね!


 これからはわたしと志織ちゃんと染多君の三人で、色の魔法で彩採市だけじゃなく、世界中をカラフルに染めてみたいな!


   * * * * * * *


 わたしがスリージェ・クープのチカラを手にしてから、もう一ヶ月ぐらいは経ったかな。世間は春の大型連休、ゴールデンウイーク!彩採市でも楽しいイベントをやるみたいなの!それはなんとイロドリ・バルーンパレード!今日のわたしは友達と一緒にこのイベントにやって来たの!


「おはよう志織ちゃん、染多君!」

「おはよう二人共……今日はたまたま稽古が休みだったから来ただけだ」

「おはよう十色さん!志織さんもリラックスして楽しもうよ!」

「そうだよね!ここからならバルーンがよく見えると思うからみんなで見て楽しもう!」

「ああ、そうだな……」


 志織ちゃんはこういう雰囲気にはあまり慣れてないみたい。てなわけでわたし達三人は沢山の人で賑わう歩道から、こっちへ向かってくるバルーン達をいつ来るかと待っていた。


「あっ!向こうから来た!」

「あれが……」


ドンチャンズンチャンズンタカタッター♪


「おおっ来たか!」

「どれもかわいい!かっこいい!」


 ついに私たちの前に、バルーンパレードがやって来た。色々なキャラクターのバルーンが列をなして道路を練り歩いている。動物や恐竜、ロボットとかもあったよ。わたし達もそのカラフルさに見とれていたの!


「どれも色とりどりでステキ!」

「ふむ、この美的センスは、俺も認めざるを得ないな」

「すごーい!かっこいいー!今日の日記に描いてみたーい!」


 パレードを見つめるわたし達とお客さん達。楽しい行列が長く続きました。すると、志織が何かに気付いたの。


「待て……あのバルーンの栓、ちゃんと締まって無いぞ!」

「えっ……あっ本当だ!」


 わたしも見て気付いた……その時……!!



ドババババババババババババババ!!!!!!



「うわわっ!!!」

「何事だ!?」

「びええええっ!!!」


「やはりな……しかも全てのバルーンが盛大に破裂するとはな……」


 わたし達の目の前で、パレードのバルーン達が突然みんな破裂しちゃったの!!!


《皆様、あまりにも突然の事態に巻き込んで申し訳ありません。只今打ち合わせ中です》


「な、なにがあったんだこれ……」

「これじゃあパレードは中止か……」

「うわーーーーん!!!怖いよーーー!!!」


 唖然とする大人達と泣き出す子供達……この状況をみんなでなんとかしなきゃ……!


「十色、染多、俺達のやるべき事は分かっているよな!」

「うんっ!」

「もちろんだよ!」


 わたし達は人混みから離れて、それぞれのアイテムを構えて言った!


『フルール・ドゥ・スリージェ・カラーズ!!!』

『神衣顕現!!!』

『オープン!クレヨンボックス!』


シュピリーーーーーン♪

ティロリラティロリラリン♪

キュレヨオオオオン!!!


『世界を彩る一撃!スリージェ・クープ!!!』

『折り綴る色彩の調べ、カムオリノミコト!!!』

『溶かして固める色の魔法、クレドゥシール!!!』


 せーのっ!


『『『わたし達、マジックカラーズ!!!』』』


 三人揃って変身したわたし達は、破裂したバルーンの前に飛び出すと!


「あっあれは!?」

「色の魔法使いさんだ!」


 すぐさま壊れたバルーンに向かって魔法をかけた!


「それっ!」

しゃららん♪ぷわあっ♪


 まず、わたしスリージェが風の模様を描いて、バルーンに新しい空気を送って。


「ゆくぞ!」

パタパタパタッ♪パサアッ♪


 カムオリが破れた所を折り紙で繋ぎ合わせて補強して。


「ボクに任せて!」

テュルルン♪トロロロン♪


 クレドゥがクレヨンでバルーンをさらに明るく彩ったの。こんな感じで破裂したバルーンをみんなのチカラで元に戻してあげたの!


「すごい!バルーンが全部直った!!!」

「これならパレードも続けられるな!!!」

「色の魔法使いさーんありがとー!!!」


 みんなの喜ぶ声を聞くと、わたし達はとっても嬉しい。悲しい記憶のままイベントが終わるのも厭だからね!


「それじゃあ!みんなで色とりどりのパレードを始めよう!」

「修行の成果を刮目して見よ!」

「みんなー!応援してねー!」


 わたし達も修復したバルーンパレードに混ざってこのお祭りを精一杯楽しんでいった。


ドンチャンズンチャンズンタカタッター♪


「すごい!すごいぞみんな!」

「今年のバルーンパレードは最高の出来栄えだ!」

「色の魔法使いさーん!とってもステキだよー!!!」


 わたし達はみんなの笑顔を見つめながら、バルーン達と街を練り歩いたのでした。


「今日はとっても楽しいね!」

「そうだな!楽しいな!」

「みんなが楽しいなら、ボクも楽しいよ!」


・・・


 やがてパレードも終わりの時間となり、バルーン達は倉庫へと帰っていった。


「よし、ここまで運べば大丈夫かな」

「みんな、良く頑張ったな」

「それじゃ、元に戻ろっか」


 わたし達は変身を解いた。


ぱしゅんっ♪


ぷしゅうううう……


 変身を解いた途端、カムオリがバルーンを補強した折り紙もただの紙切れになり、クレドゥが描いたものも消滅した。


「あらっ、誰か来る……!」


 それは倉庫の作業員さんでした。どうやら上司に謝ろうとしているみたい。


「お、俺がいけなかったんです!空気の栓をしっかりしなかったばっかりに、あんな事になってしまって!本当に申し訳ございませんでした!!!」


 謝る作業員さん、すると上司さんは……。


「そ、そうだったか……しかし、今回は色の魔法使い達がこの状況を何とかしてくれたおかげで、イベントの中止は免れたんだよ」

「え……?」

「だから今回はペナルティを免除するが、次はこのような事が無いようにしっかり仕事をするように」

「あっ……ありがとうございましたあ!!!」


 どうやら丸く収まった様子。


「本当に、良かったね」

「今回の件は、母にも語っておこう」

「ボク達も、帰ろうか」


 わたし達は倉庫でしぼんだバルーン達にお別れして、家に帰っていきました。


   * * * * * * *


 ゴールデンウイーク明けの学校。


「ねえ見てた?この前のバルーンパレード!」

「色の魔法使いが突然のピンチを救ったんだってね!」

「僕は配信で見てたけど、まさか破裂したバルーンが全部元通りになるなんて!」

「すごかったよね!また見に行きたい!」

「俺もそのうち、会えるかな!」


 わたし達色の魔法使いのウワサで、学校中が盛り上がっていたの。


「この間はとっても楽しかったよね」

「あれからイベントの企画者も、次回はもっとすごいのを作る気になったようだ。あの作業員も今後は念入りに点検するとも言っていた」

「そうなんだ、楽しみだね!」


 もちろん、色の魔法使いがわたし達だって事はわたし達だけのヒミツなの!次はどんな事を色の魔法で解決していくのかな!


 ……って思っているけど、そういえば志織ちゃんって、普段はどんな生活をしているんだろう。なんだか急に気になっちゃったな!


 つづく

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