第4話 クレヨンの魔法使い、クレドゥシール!

 色が失われかけた時代、ある場所では、独自のアイテムを使う色の魔法使いが活躍していた!


「クレヨンのチカラで、みんなの役に立つんだ!!!」


 その人の努力もあって、世界に色と平和が戻ったのだが……。


「あれっ!変身するためのクレヨンどこ行っちゃったんだあ!?」


 かつて活躍した者の中には、うっかりさんもいた。その後探し物は一生かけても見つからず、長い時間を経て、思わぬ場所で見つかる事になった……。




   * * * * * * *




 皆さん初めまして。ボクの名前は画葉がよう染多そめた


 彩採市に住んでいる小学一年。好きな事はクレヨンで画用紙に絵を描く事。お気に入りの服は黄緑色のTシャツと短パン。


 ちょっと前の事なんだけどね、ボクが飛ばした紙飛行機が木の枝に引っ掛かっちゃって取れなくなって泣いていたら、三色の服を着た不思議な人が来て、手にしたペンでちょうちょを描くと、本物になって紙飛行機を取ってくれたんだ。


 それから別の日にはデパートの火事に巻き込まれちゃって、あの時の人が火事を消してくれて、助けに来たヘリコプターがこっちに激突する前に折り鶴を操る人が支えてくれたんだ。


 こんな感じに不思議な事が沢山起こって、今度は一体何が起こるのかなと思っていたんだけど……。


   * * * * * * *


 デパートの火事から助けられて数日後。ボクは自分の家でお留守番をしていた。


「今日はお父さんとお母さん、大事な用事があるからってボクだけお留守番だなんて……なんかもっと楽しい事とか無いのかな……」


 よりにもよって夕方まで両親不在の休みの日。ボクの目の前にあるものといえば、お母さんが作り置きしたサンドイッチと、画用紙とクレヨンと、色々入ってるおもちゃ箱ぐらい。ボクはおもちゃ箱の中身をガサゴソと探る。


「なんか面白いもの無かったかな……って、あれ?」


 すると、おもちゃ箱の中に、見慣れないものが入っていたので、取り出してみた。


「なにこれ……クレヨンみたいなのが付いている、箱のようなベルト…………あっ、何か紙が貼ってある」


 ボクはそのベルトの後ろに貼ってある紙を広げた。きっと説明書かなんかだろう。


「あれ……これ何だか意味分かる気がする……このベルトを腰に巻いて、オープンクレヨンボックスという……?」


 その紙には、日本語でも、英語でもなければ、何語とも言い表せない変な文字が書かれていた。けどボクには何故か、スラスラと読む事が出来た。初めて見る文字のはずなのに、何でだろうな。


「こんなのいつからあったんだろう……でも気にしなくていいか。よしっ、やってみよう!」


 これはきっとただのおもちゃだと思ったボクは、意を決してそのベルトを巻いて言ってみた。


「オープン!クレヨンボックス!」


 すると……!




キュレヨオオオオン!!!




 突然ベルトから三色の光が帯状に飛び出してボクの身体に巻き付いた!まるで、クレヨンで身体のあちこちを塗りつぶされるかのように……!!!


「こっ……これっ……どうなっちゃうのおっ!?」


 光が収まると、ボクの姿は変わっていた。赤くて真ん中に『C』と書いてあるTシャツを着て、青い半ズボンを履いて、手には黄色いグローブ、足には黄色いブーツ、首には赤と黄色と青のマフラー、あと頭からはマフラーと同じ三色の髪が前方に伸びていた。


「ええっ!?これがボクぅ!?」


 鏡で自分自身を見ても、本当に姿がかわっていた。急にこんなすごい姿に変身しちゃうなんて、今お母さんが見たらビックリする事だろう。


 ボクはまた不思議な文字のメモを読んだ。


「クレヨンのチカラを持った魔法使い、クレドゥシールになれたかな……それがこの姿の名前?」


 どうやらこの姿はクレドゥシールというみたい。さらにはこの姿での使い方も細かく書かれていた。


「好きな色を思い浮かべて腕にチカラを込める?今は赤と青かな!」


ドゥルルン♪


 するとボクの右手には赤い大きなクレヨン、左手には青い大きなクレヨンが握られていた。


「これって普通のクレヨンとどう違うんだろう」


 ボクはこれで画用紙に線を描くと、なんと紙に描かなくても線が立体化した!


「わっ!すごいっ!これならドンドン描けそう!楽しい!」


 ボクは勢いに任せて、部屋中にクレヨンで色々描いてみた!あまりにも楽しくて時間がどんどん過ぎていった……すると!


「ただいまー」


 お母さんの声だ。もしこの状態を見せられたら怒られてしまう……!


「え、ええっと!!!」


 ボクは思わずベルトの留め具を外した。


ぽこんっ♪


 ボクの姿は元に戻り、クレヨンで描かれたものは全て消え去った。


「はあ……あっ」

「お帰り染多……あらら、こんなに散らかしちゃって」

「ごめんお母さん、全部片付けるよ!」

「そうなの、偉いわね。さて、今からお父さんにも美味しい夕飯用意しなくちゃね!」


 お母さんが台所に行った後、ボクは一人で部屋を掃除した。結局、あのベルトの事も、変身した事も秘密にしていたのだった。でも、あの楽しいひとときは、ボクのココロに強く残ったのだった。夕飯を食べて、お風呂に入って、布団で寝る時も、このチカラをどう使えばいいかを考えていた……。



   * * * * * * *


 数日後。


 ボクはリュックにあのベルトを入れてお散歩していた。すると、目の前で前にボクを助けた人達が……!


「わあ〜っ!アヒルさん達、落ち着いてっ!」

「これは一筋縄では行かない案件だな!」


ガアガアガアガアガアガアガアガアガア!!!


 運んでいる途中のアヒル達がドアが開いたトラックから脱走して、ペンのお姉さんと折り紙の人の魔法をもってしても苦戦していたのだった。


 その様子を見つめる黄緑の服の少年……それがボク。


「ペンのお姉さんと折り紙の人……」


 今のボクの手には、不思議なクレヨンの箱のベルトが握られていた。


「もう、今までのボクじゃない!!!」


 ボクはベルトをセットして!


「オープン!クレヨンボックス!」


 クレヨンの箱を開けると、まばゆい光に包まれて……。


キュレヨオオオオン!!!


 クレドゥシールに変身した。


「溶かして固める色の魔法、クレドゥシール!!!」


 ボクは黄色のクレヨンを持って、アヒルを囲むように柵を描いた!


「これでいい感じにアヒル達を捕まえられる!」


 ボクがアヒル達を捕まえる様子を、ペンのお姉さんと折り紙の人は驚きながら見ていた。


「わあすごい!わたしでもあんなに出来ないのに!ねえペンの中のスリージェさん!」

『まさか、ここにも色の魔法使いがいたとは!』

「あれも新手のマジックカラーズとでもいうのか!」


 そうこうしている内に、アヒル達は一羽も欠ける事無くみんな捕まえて、ドアが開いたトラックに入れて、ちゃんと鍵を閉めて、あらためて運ばれたのだった。


「お家に帰れて良かったね」


 すると、ペンのお姉さんと折り紙の人が来た。


「すごいねキミ!わたしでも難しい事が出来るなんて!」

「君も色の魔法使いというのなら、ひとまず神織神社に来るが良い」

「は……はいっ!」


 ボクは二人の案内で、神織神社まで歩いていった。


・・・


「ここなら、変身を解除してもいい。一斉に解くぞ」

「わ、分かった!」


ぱしゅんっ♪


 三人揃って変身を解くと、目の前には同じ学校の四年生の女子が二人いた。しかも……


「あっ!君!あの時紙飛行機を取ってあげた子!」

「そう!ボクだよ!あの時はありがとう!」

「改めて聞くが、そのチカラをどこで?」


 ボクは出来る限りこのベルトの事を説明した。


「そうだったんだ。スリージェさん、何か知ってる?」

『わたしも会った事が無いので良くわかりませんが、ここにも色の魔法使いはいたのですね』

「これからこの町の困り事を一緒に解決していくというのなら心強いが、出来るか?」


 ボクは二人に言った。


「ボクだってみんなのお手伝いがしたい!」


 二人の返事は。


「わたしだったら、いつでもいいよ!」

「十色……まあいいだろう、同じ色の魔法使い同士、仲良くしようじゃないか」

「そういえば、キミの名前は?」

「ボクは染多!画葉染多!」

「あらためまして、わたし会垣十色!」

「神衣志織だ、よろしく」

「うんっ!よろしくっ!」


 こうして、ボクの新しい楽しみが出来た。クレドゥシールのチカラを仲間達と同じように上手く使って、世の中をカラフルに、明るく楽しく染めていく事。


 ボクはあの説明書を改めて読んでみると、最後の方にこう書かれていた。


「もしこのクレヨンを失くしちゃっても、この文字で書いておけば誰にも悪用されないだろう……?なんでボク、この字が分かるのかな……?」


 ともかく、これから先、もっとすごい事が起りそう!でも、また今度お話してあげるからね!


 つづく

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