ミッション19:「ミーティング」
時間は経過し、同日の午後。
場所は基地庁舎内にある大教場。
そこをミーティング会場とし、数日後に開始の計画されている対フィアー大規模作戦のミーティングが始まっていた。
集ったのは、浜松基地所在の飛行隊の隊員から。他基地より来隊して展開中の飛行隊隊員に、一部は海自航空隊隊員。さらに今先に見たアメリカ海空軍の軍人など、多数。
無論その内には、隼等の姿もあった。
「――今回の作戦は、人類がフィアーに脅かされる事となって以来、初めての大規模な〝攻勢作戦〟となるだろう」
すでにミーティング、その作戦の説明は始まっている。
此度の作戦で、その主導中核を任とする者の一人である、老練の磨きの気配が漂いつつある空自の二等空佐が。
投影されるプロジェクターの前に立って言葉を紡いでいる。
「此度の作戦は、クルェスさんの多大な協力あってのこと、いやほとんど彼の成した成果といってもいい。彼の開発にこじつけた捜索装置が、フィアーの重要施設の存在位置を特定したことから可能となったものだ」
そこで二等空佐は一度、教場内の端に視線を流し。そこに同伴して優雅な姿で立っていた美少年クルェスを示し、そう明かす言葉を紡ぐ。
異次元空間とを繋ぐ接続口、「コネクター」によって予測不可能な場所に神出鬼没に現れ、人類世界を翻弄してきたフィアー。
しかしフィアーのそれを可能とするのは、フィアーの「母船」もしくは「要塞」とも言うべき、その活動の中枢となる巨大な拠点の。詳細にはそれが宿す「コア」が生み出すエネルギーによる物だという。
これは、クルェスの世界ですでに突き止めるに至った事実であるとの事だ。
そして、クルェスの持ち込んだ技術知識によって、これの位置を特定することがついに可能となった。
「そしてまたクルェスさんによって、これを崩壊無力化せしめる「対フィアー装備」の開発が完了。作戦を実行するだけの数が揃った」
その事実を背景にした説明から、さらに紡ぐ二等空佐。
またそのクルェスの持ち込んだ技術によって開発されていたのが。
そのフィアーの拠点のコアを、さらには全てのフィアーを。その体を、存在を崩壊させて無力化せしめる強力な新装備――「対フィアー装備」であった
それはこちらの世界で誘導弾、ミサイルの形で完成され。これよりの大作戦に向けた数がようやく揃ったところであった。
なお。これらの技術はクルェスの元の世界で、あと一歩の所で完成にこじつけられる所であったという。
しかしその前にクルェスの世界はフィアーに滅ぼされ。クルェスは一人、生まれの世界より零れ落ちるように逃がされた。
今に見えるクルェスの姿は、悠然とした色を見せているが。その内に深い無念に悔しさ、憎しみがある事は容易に察する事ができた。
「作戦自体はいたってシンプルだ。フィアーの拠点は秘匿隠蔽されているが、その座標はすでにこちらの索敵装置で特定している。作戦時には、その秘匿隠蔽を同装置のジャミング派にて剥ぎ、燻り出されてきた所に対フィアー装備を叩き込むッ」
二等空佐は、作戦の全容を簡潔に言葉にして見せた。
そしてそこから、その詳細の説明が始まる。
「作戦の中核となるのは、空自の対艦攻撃飛行隊、そして米空軍の爆撃航空団だ。これら主力部隊が、燻り出されて来たフィアーの拠点に、搭載して行く限りの対フィアー火力を投射、その殲滅を図る」
そこで一度区切り、二等空佐は続ける。
「無論、敵フィアーの抵抗は予想も難しい激しさとなるだろう。空自戦闘飛行隊はこれを全力全霊をもって援護支援せよッ」
二等空佐はその言葉を確たる言葉で紡ぐ。
「当浜松基地で集合編成した飛行隊の他、行程途中で最寄りの基地からも二つの編成部隊が合流。これにさらに洋上で、海自の護衛艦飛行隊と米海軍の空母航空団も合流。これをもって作戦部隊とし、その完遂を担う」
そこまでを言葉にすると、二等空佐また一度クルェスの方を見て、言葉を送る。
「私からの主だった事はこれくらいですが――クルェスさん、何かありますか?」
それを受けたクルェスは、静かに優美な歩む動きで。大教場の各員の前へと出る。
「大筋は今に中佐、いやニサ?が説明してくれた通りだ。フィアーはボクらの世界でも行動原理の全てを解明することはできなかった。細かくがどうなるかは、すまないがその時まで分からない」
そしてそんな告げる言葉を皆に向けるクルェス。その口調はいつもの美少年の風体に反した、何か胡散臭いものだが。
「あらゆるを想定し、確たる意思で作戦に臨んでくれたまえ」
しかしその色に様子には、真剣のそれが帯びている事が確かに伺えた。
「質問は?――今この場無いようでも、後に浮かんだなら確認を疎かにしないように。後の部隊ごとのミーティングの時に聞いてもいい、徹底してくれ。――では、解散」
最後に質疑応答の有無を訪ね、しかしこの場では上がらなかったため、補足注意の言葉を紡いで各々へ促し。
二等空佐は解散の号令を掛けた。
薄暗かった教場に明かりが灯り、ミーティングに参加していた各々が騒々しく次に次に席を立っていく。
この後にはそれぞれの所属部隊での調整、仕事が皆待っている。
「ハ――」
隼も小さな吐息を吐きつつ、これよりの諸々に少しの倦怠を覚えつつそれに倣おうとしたが。
「――っ?」
「ちょいとこの後の隙間時間に、お客さんの部隊を冷やかしに行こうぜっ」
しかしそこへ肩がつつかれ。隣に座っていた飛燕より、悪戯っぽい笑みでのそんな提案の言葉が寄越された。
航空自衛隊TSギア作戦記 ―出撃せよ、戦闘少女飛行隊!……でも中身は皆男性!?― EPIC @SKYEPIC
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